豪フォレストリー・オーストラリア(Forestry Australia)は1月28日、持続可能な森林管理が炭素隔離や排出削減、気候変動への適応において極めて重要な役割を果たすとする「森林炭素残高エビデンス・レビュー」を公表した。
最新の科学的知見をまとめた本報告書は、適切に管理された森林がオーストラリアの排出削減目標達成に不可欠であることを強調している。森林を単なる「固定的な炭素貯蔵庫」ではなく、適切な介入が必要な「動的なシステム」として捉えるべきだと提言した。
報告書によると、森林はオーストラリアで最も重要な炭素吸収源の一つであるが、その炭素貯留量は固定的なものではない。
森林が老化するにつれて自然死や大規模火災などの攪乱(かくらん)により炭素貯蔵量が減少するリスクがある。特に2019年から2020年にかけて発生した大規模な森林火災(ブッシュファイア)は、2020年におけるオーストラリアの総温室効果ガス排出量の約35%に相当する排出を記録した。
フォレストリー・オーストラリアのミシェル・フリーマン会長は「森林は永続的な炭素の金庫ではなく、動的なシステムである」と指摘した。その上で、時間の経過とともに森林をどのように管理するかが、その森林が炭素に対してプラス、ニュートラル、あるいはマイナスの影響を与えるかを大きく左右すると述べた。
また、本報告書は森林炭素の正確な推定には、製品のライフサイクル全体を通じた分析が必要であると主張している。
これには、現場の炭素ストックだけでなく、管理や輸送、加工に伴う排出量、さらには木材製品に貯蔵される炭素量も含まれる。鉄鋼やコンクリートといった排出集約型の資材を木材に代替することで、具体的に最大75%のカーボンフットプリント削減が可能になるという。

一方で、国内の木材生産を抑制することによる「リーク(漏出)」のリスクについても警鐘を鳴らした。
国内生産が減少して輸入木材への依存が高まれば、書類上の排出量は改善される可能性があるが、実際には排出規制の緩い他国へ排出を転嫁するだけに過ぎない。報告書は、こうしたリークが最大で70%の規模に達する可能性があると推定している。
今後の展望として、フォレストリー・オーストラリアは政府に対し、森林破壊や大規模火災からの森林保護、植林による森林被覆の拡大、そして地域で持続可能に生産された木材製品の利用促進を求める政策提言を行った。フリーマン会長は「適切に管理された森林こそが、オーストラリアに真の長期的気候利益をもたらす」と強調し、次期政策決定プロセスにおける科学的根拠の反映を求めた。
今回の報告書は、カーボンクレジット市場、特に自然由来の解決策(NbS)に関わる事業者にとって重要な指針となる。
「森林を保護して放置する」という従来の手法だけでは、火災や老朽化による排出リスク(非永続性)を制御できないことが科学的に示されたからだ。
特に注目すべきは「70%のリーク(漏出)」という具体的な数字である。
これは、特定の地域で伐採を止めてクレジットを創出しても、その分他所で伐採が増えれば地球全体ではプラスにならないという「質」の議論に直結する。
今後は単なる面積ベースの保全ではなく、適切な間伐や燃料管理を組み合わせた「アクティブ・マネジメント(能動的管理)」によるクレジット創出が、より高い信頼性とプレミアム価格を得る時代になるだろう。


