米LanzaTech「カーボンリサイクル」商用化へ30億円の資金調達 SAF市場の覇権狙う

村山 大翔

村山 大翔

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米国のカーボンリサイクル技術大手、ランザテック・グローバル(LanzaTech Global, Inc.)は1月22日、第三者割当増資により2,000万ドル(約30億円)の資金調達を完了したと発表した。

同社は独自のがす発酵技術を用いて、製鉄所などの産業廃ガスをエタノールや持続可能な航空燃料(SAF)に転換する事業を展開しており、今回の資金は技術の商用展開とプロジェクト開発の加速に充てられる。世界的に産業部門の脱炭素化が急務となる中、排出される炭素を「資源」として再利用するCCUモデルの確立を急ぐ。

今回の資金調達には、新規の戦略的投資家であるサイトグラウンド(SiteGround)のほか、既存の機関投資家が参加した。同社は2025年5月にも4,000万ドル(約60億円)を調達しており、今回の増資によって財務基盤をさらに強化した。ランザテックのジェニファー・ホルムグレン最高経営責任者(CEO)は「今回の投資により、低炭素製造と燃料生産のあり方を再構築する可能性を秘めた、インパクトの強い商業案件を推進する準備が整った」と述べ、市場変革への意欲を示した。

同社は2025年を通じて、欧州や英国でのプロジェクト支援を相次いで獲得している。

欧州連合イノベーション基金(EU Innovation Fund)から4,000万ユーロ(約65億円)、英国運輸省の次世代燃料基金(Advanced Fuels Fund)から640万ポンド(約12億円)の助成を確保した。これらの資金は、炭素回収・利用・貯留(CCUS)イニシアチブやSAF開発の推進に投じられる計画である。

事業面では、同社が過半数の株式を保有するランザジェット(LanzaJet)を通じて、世界初の商用規模となるエタノール由来のSAF生産施設を稼働させたことが大きな転換点となった。ランザテックの基幹技術は、鋼鉄生産時の排出ガスなどを微生物によってエタノールへと変換するもので、すでにアジアや欧州の重工業パートナーと提携し、商用プラントを運営している。

今後の戦略として、同社は「ハブ・アンド・スポーク」型の生産モデルを掲げる。これは、各地に分散した工場から排出ガス由来のエタノールを集約し、中央の拠点で一括してSAFや化学品に加工する仕組みである。このモデルにより、生産の柔軟性を高めるとともに、低炭素燃料の大量供給体制を構築する。

産業界の脱炭素化がカーボンクレジットの創出や排出枠取引に直結する中、同社の技術は排出削減と新たな収益源の確保を両立する手段として、投資家からの信頼を集めている。

CCU技術の「社会実装フェーズ」への突入

今回の資金調達は、単なるスタートアップの延命ではなく、カーボンリサイクル技術が「実験室」から「産業インフラ」へと脱皮する重要なステップであると捉えるべきだ。

特に注目すべきは、ランザテックが提唱する「ハブ・アンド・スポーク」モデルだ。これは、これまで「点」で存在していた各地の排出源を「線」でつなぎ、SAFという高付加価値製品へ効率的に変換するサプライチェーンの構築を意味する。

日本の鉄鋼・化学メーカーにとっても、同社のモデルは極めて示唆に富む。排出されるCO2を単に地下へ埋める(CCS)だけでなく、燃料として再資源化(CCU)し、それをSAFクレジットや低炭素製品として市場に流通させる「炭素循環型ビジネス」への転換が、今後の国際競争力を左右することになるだろう。

参考:https://www.globenewswire.com/news-release/2026/01/22/3224298/0/en/LanzaTech-Announces-Successful-Closing-of-Private-Placement-Financing.html