アイルランドの大気直接回収(DAC)スタートアップであるネグエイト・カーボン(NEG8 Carbon)は2026年1月14日、同国初となるフルスケールDACシステムの仕様を策定するため、エンジニアリング・コンサルティング大手のプロケム・エンジニアリング(Prochem Engineering)と基本合意した。
本プロジェクトは、ネグエイト・カーボンのウォーターフォード本社に建設され、年間50トンの二酸化炭素(CO2)を大気中から直接回収する能力を持つ。同国における炭素除去(CDR)技術の商業化と、政府が掲げるネットゼロ目標の達成に向けた重要な一歩となる。
今回の提携により、両社はネグエイト・カーボンが開発した独自の静電DAC技術の実証モジュールを設計する。このシステムは、大気を吸い込み、特殊設計された吸着剤(ソーベント)を通過させることでCO2分子を分離・回収する仕組みだ。回収されたCO2は、地中深くに永久貯留されるか、あるいは持続可能な航空燃料(SAF)などの環境低負荷な製品の原料として再利用される。
ネグエイト・カーボンは、2014年にトリニティ・カレッジ・ダブリン(Trinity College Dublin)およびユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(University College Dublin)のCO2回収研究からスピンアウトする形で設立された。今回のエンジニアリング調査を通じて、DAC技術のさらなる改良とコスト低減を図り、グローバルな商業展開への道筋をつける狙いがある。
本プロジェクトを主導するネグエイト・カーボンの最高技術責任者(CTO)であるジョン・ブリーン博士は、「この年産50トン規模のユニットは、当社のシステムがネットゼロおよびネガティブエミッションの実現を支援する、先進的なエンジニアリング技術であることを証明するものだ」と述べた。
また、キルケニーに本社を置くプロケム・エンジニアリングのディレクター、マイケル・ケント氏は、「アイルランドの優れた技術力とイノベーションを象徴する画期的なプロジェクトに参画できることを光栄に思う。この提携は、低炭素な未来に向けた両社の持続可能なソリューションへのコミットメントを反映している」と指摘した。
プロケム・エンジニアリングは1995年設立の老舗エンジニアリング企業であり、アイルランド国内のプロセス産業において30年以上の実績を持つ。同社が持つ高度なプロセス設計の知見を投入することで、ネグエイト・カーボンは2026年内のフルスケール実証開始に向けた開発スピードを加速させる。
アイルランド政府は近年、気候変動対策として革新的なCDR技術の導入を後押ししており、今回のプロジェクトはその試金石となる。同国におけるDAC技術の確立は、欧州全体でのカーボンクレジット市場における供給能力の強化にもつながる可能性が高い。
今回のネグエイト・カーボンの動きは、DAC技術が「研究段階」から「産業実装段階」へと移行したことを明確に示している。
注目すべきは、年間50トンという規模。
これは個別の実証としては十分なサイズであり、ここでのデータが将来的にメガトン規模へとスケールアップする際の重要なベンチマークとなる。
日本企業にとっても、SAF原料としてのCO2確保や、海外での高品質なカーボンクレジット創出の観点から、こうしたモジュール型のDAC技術の進展は注視すべき動向といえるだろう。


