カナダの炭素除去技術スタートアップであるアルカ・クライメート・テクノロジーズ(Arca Climate Technologies、以下「アルカ」)は2026年1月14日までに、ブリティッシュコロンビア州の「ターンアゲイン・ニッケルプロジェクト」において、鉱山廃棄物を活用した二酸化炭素(CO2)除去に関する10年間の独占契約をギガ・メタルズ(Giga Metals Corporation)と締結した。
三菱商事も参画する同プロジェクトでは、ニッケル採掘の過程で発生する膨大な廃棄岩や尾鉱を利用し、プロジェクト期間中に最大2億2,000万トンのCO2を大気中から永久に除去する計画だ。脱炭素化が急務となる鉱業において、重要鉱物の供給と大規模な炭素除去(CDR)を両立させる新たなビジネスモデルの構築を目指す。
今回の合意に基づき、アルカは独自の「産業的鉱物化(Industrial Mineralization)」技術を用いて、ターンアゲイン・プロジェクトで発生する超塩基性岩の廃棄物のCO2吸収能力を評価・検証する。ギガ・メタルズの推計によれば、操業開始後には約13億トンの超塩基性材料が発生する見込みである。
アルカの技術は、これらの岩石に含まれる鉱物を活性化させることで、大気中のCO2を固体鉱物へと変換する自然の化学反応を劇的に加速させる。生成された化合物は数万年にわたって安定的に貯蔵されるため、信頼性の高いCDR手法として注目されている。
ニッケルは電気自動車(EV)向けバッテリーなどのエネルギー移行に不可欠な「重要鉱物」として、カナダ政府の戦略的優先事項に指定されている。アルカのポール・ニードハム最高経営責任者(CEO)は、同プロジェクトがカナダ最大級の未開発ニッケル資源であることを強調した上で、「重要鉱物の開発と永久的なCO2除去を組み合わせることで、プロジェクトの経済性を高め、社会に広範な利益をもたらす新しいマイニング・パラダイムを提示できる」と述べた。
アルカは既に2025年、米マイクロソフト(Microsoft)との間で今後10年間にわたり30万トンのCDRクレジットを提供する大型契約を締結しており、今回のプロジェクトはその供給源としての役割も期待されている。
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ギガ・メタルズのスコット・レンドラムCEOは、アルカと10年以上にわたって炭素固定化の研究を共に行ってきた経緯に触れ、「本契約により、高いESG評価を持つニッケル精鉱の生産と、鉱山廃棄物の反応性鉱物への転換による炭素固定の最大化に、双方が専念できるようになる」と指摘した。
今後、アルカは独自の自律型ローバーを用いたサンプリングや分析、パイロット規模の試験、および技術経済性の調査を実施する予定である。
カナダ政府による「重要鉱物主権基金」などの政策支援を背景に、同プロジェクトがいつ本格的な商用CDRを開始するかが、今後の炭素市場における供給量の予測を左右する重要な焦点となる。
本ニュースは、三菱商事が参画するプロジェクトが、世界最大規模のCDR供給拠点へと変貌する可能性を示唆している。
特筆すべきは、単なる排出削減ではなく、鉱山そのものを「巨大なCO2吸収源」として定義し直している点だ。マイクロソフトのような大手テック企業が既にアルカからクレジットを購入している事実は、この「鉱物化によるCDR」が市場から高い信頼を得ている証左と言える。
日本企業にとっても、サプライチェーンの脱炭素化と高品質なカーボンクレジットの確保という二つの文脈で、非常に重要な先例となる。
参考:https://gigametals.com/news/arca-and-giga-metals-sign-exclusive-agreement/


