2026年1月9日、フィリピン・シェル(Shell Philippines)は、現地鉱業大手TVIリソース・デベロップメント・フィリピン(TVI Resource Development Philippines Inc.:TVIRD)の2つのプロジェクトに対し、カーボンクレジット償却証明書を授与した。
この認定はシェルの「炭素補償プログラム(Carbon Compensation Program)」に基づくもので、鉱山運営に伴う不可避な排出量を、森林再編や保全活動への投資を通じてオフセットした成果を公式に認めたものである。
今回認定を受けたのは、ザンボアンガ・デル・スール州のバラバグ金・銀プロジェクトと、スリガオ・デル・ノルテ州のシアナ金プロジェクトの2箇所である。バラバグでは2024年に965トンのCO2換算排出量を、シアナでは2025年に900トンのCO2換算排出量を、それぞれシェルのグローバルなカーボンクレジットポートフォリオを通じて吸収・回避した。これにより、両事業を合わせて合計1,865トンの炭素排出量が実質的に償却されたことになる。
授与式はマニラ首都圏マカティ市のTVIRDで行われ、フィリピン・シェルの商用燃料部門セールスマネージャーであるホセ・マリ・マカサパック(Jose Mari Macaspac)氏から、TVIRDのマイケル・G・レジーノ(Michael G. Regino)社長に証明書が手渡された。シェルの炭素補償プログラムは、企業が経済活動において避けられない排出量を、認証された世界各地の森林保護活動などへ投資することで相殺できる仕組みを提供している。
フィリピン・シェルの商用燃料アカウントマネージャー、イザベル・クエバス(Isabel Cuevas)氏は「このパートナーシップは、環境に意味のある影響を与える高品質なプロジェクトを支援するという共通のコミットメントを反映している」と述べた。
TVIRDはこれまでに、両プロジェクトの周辺地域で計180万本の植林を実施しており、今回のクレジット償却は同社が進めてきた環境保全策を補完する形となる。
フィリピン政府は2030年までに温室効果ガス排出量を75%削減する目標(NDC)を掲げている。特にエネルギー移行に不可欠なニッケルや銅などを供給する鉱業部門において、排出管理と資源開発の共存は喫緊の課題となっている。TVIRDは2025年11月にも大統領鉱業環境賞を受賞しており、今回のシェルとの連携を通じて、気候変動対策へのさらなる適応を目指す考えだ。
本件は、ハード・トゥ・アベートなセクターである鉱業が、ボランタリーカーボンクレジット市場をいかに活用すべきかを示す好例と言える。
単なるクレジットの購入にとどまらず、自社による180万本の植林というネイチャーベース(NbS)の取り組みと、石油メジャーが提供する償却プログラムを組み合わせることで、企業の「気候リーダーシップ」を外部認証させている点が非常に戦略的だ。
フィリピン政府の野心的な削減目標を背景に、今後は同様の「クレジット活用によるサプライチェーンの脱炭素化」が東南アジアの資源開発現場でスタンダード化していくだろう。
参考:https://tvird.com.ph/2026/01/tvird-balabag-and-siana-projects-feted-by-shell-philippines/


