バイオ炭施設の資産売却で12億円を確保 BluSky Carbon「米アーカンソー州拠点」の拡張を加速

村山 大翔

村山 大翔

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炭素除去技術(CDR)を開発するカナダのブルースカイ・カーボン(BluSky Carbon Inc.)は、米国アーカンソー州のバイオ炭製造施設「AR1」をアソシエイテッド・エナジー・デベロッパーズ(Associated Energy Developers:AED)が設立した事業目的会社に売却し、同時に運営保守を請け負う契約を締結した。

売却総額は831万4,650ドル(約12億4,700万円)にのぼり、この資金を投じた施設拡張は2026年1月末までに完了する予定である。本合意により、AR1施設はフル稼働時に年間約4万トンのバイオ炭生産能力を持つ見通しだ。

今回の契約では、AED側の特別目的会社であるWARB1 LLCがAR1施設の資産を取得した。同社はブルースカイに対し、まず40万ドル(約6,000万円)の手付金を支払い、施設の稼働後または2026年1月31日のいずれか遅い期日までに、追加で40万ドルのコミッショニング支払いを行う。残金については、ブルースカイが年利1.99%という有利な条件で売り手貸付(セラー・ファイナンス)を提供し、最低12年かけて回収する構造となっている。

ブルースカイは資産売却後も、独占的な運営保守サービスプロバイダーとして施設に残り、実務を継続する。AR1施設には、同社独自の熱分解装置「バルカン・ヘビー(Vulcan Heavy)」が複数導入される。この装置は1時間あたり5トンの有機廃棄物を処理し、高品質なバイオ炭とともに電力生成用のバイオ合成ガスを回収する能力を持つ。同社はこの拠点を、炭素鉱物化技術や直接空気回収(DAC)を組み合わせた複合施設「キロプレックス(Kiloplex)」の重要拠点と位置づけている

アーカンソー州ウォーレンに位置する同施設は、クリーンなバイオマス資源が豊富であり、農業分野の最終利用者に近いことから輸送コストを抑制できる利点がある。ブルースカイは2024年末に同地での生産を開始しており、すでに10年間で総額1億500万ドル(約157億5,000万円)に達するバイオ炭の長期オフテイク(引き取り)契約を締結済みである。今回の資産売却後も、この引き取り契約に伴う収益性は維持される。

ブルースカイの最高経営責任者(CEO)であるウィル・ヘッサート氏は「AEDは再生可能エネルギー事業の知見をバイオ炭の世界に持ち込み、業界が長年待ち望んでいたプロジェクト・ファイナンスの手法を確立した。このモデルを全米で計画中の数十のプロジェクトに展開していく」と述べた。また、AEDのCEOは「バイオ炭は土壌改良だけでなく、グラフェン製造を通じて太陽光発電用の蓄電池などの新市場にも応用可能だ」と指摘した。

両社は、AR1施設で確立したこのファイナンスモデルを、次期プロジェクトである「AR2」にも適用する方針だ。今回の取引の最終的な完了は、内部承認や初回支払いの実行を条件としており、2026年1月末までの動向が注視される。

本ニュースの核心は、新興のバイオ炭事業において「プロジェクト・ファイナンス」のスキームが成功裏に導入された点にある。

これまでのCDR事業は、スタートアップが自前で設備投資(CAPEX)を負担する重いビジネスモデルが主流であった。しかし、今回のように資産を売却して現金(流動性)を確保しつつ、運営(O&M)で継続的な収益を得るモデルは、アセットライトな拡大を可能にする。

特に、1.99%という極めて低い金利でのセラー・ファイナンスを実現した点は、事業の確実性とオフテイク契約の信頼性が高く評価された結果と言える。

日本のバイオ炭事業者にとっても、初期投資の負担を軽減し、スケールアップを加速させるための重要な先行事例となるだろう。

参考:https://bluskycarbon.com/blusky-carbon-signs-project-financing-deal-company-enters-8-3-million-asset-purchase-agreement/