欧州委員会(European Commission)は、デンマーク政府が策定した総額38億ユーロ(約6,000億円)規模の炭素回収・貯留(CCS)支援スキームを、EUの国家補助(State aid)規定に基づき承認した。この決定は、化石燃料由来の排出削減に加え、生物由来および大気中の二酸化炭素(CO2)を回収する炭素除去(CDR)技術への投資を加速させるもので、同国が掲げる野心的な気候目標の達成を後押しする。
年間230万トンのCO2削減・除去へ
今回の支援策は、2029年から2044年までの15年間にわたり、年間230万トンのCO2回収・貯留を実現することを目指している。期間中の総削減・除去量は3,450万トンに達する見込みだ。デンマークの2024年のCO2換算排出量が3,800万トンであることを踏まえると、このスキーム単体で国の年間排出量の約6%に相当する処理能力を確保することになる。
特筆すべきは、支援対象の広さだ。工場などから排出される化石燃料由来のCO2だけでなく、バイオマス(生物資源)由来のCO2や、大気から直接回収するCO2も対象に含まれる。これにより、バイオエネルギー・炭素回収貯留(BECCS)や直接空気回収(DAC)といった、大気中の炭素を減らすCDR技術の実装が進むことが期待される。
競争入札による「ペイ・アズ・ビッド」方式
補助金は、CO2の回収・貯留量1トンあたりの固定額として支給される。事業者の選定には競争入札が導入され、入札価格に基づいて支払額が決定する「ペイ・アズ・ビッド(Pay-as-bid)」方式が採用された。
事業者は年間で回収・貯留するCO2量を申告し、実績が検証された後に補助金が支払われる仕組みだ。申告量を超過した分については支払いの対象外となる。支援期間は15年間で、回収、輸送、地中貯留にかかるコストをカバーする。なお、CO2の回収はデンマーク国内で行う必要があるが、貯留地については国外のサイトを利用することも認められている。
2029年稼働が必須条件
今後のスケジュールとして、入札プロセスは現在進行中であり、2026年4月頃に落札事業者が決定される見通しだ。選定された施設は、2029年12月1日までに稼働を開始しなければならない。
欧州委員会は、今回のスキームについて「EUの気候・環境保護・エネルギーに関する国家補助ガイドライン(2022年版)」に基づき審査を行った。その結果、CO2削減・除去という目的達成のために「必要かつ適切」であり、EU域内の競争や貿易への影響も最小限に抑えられているとして、承認に至った。
デンマークは1990年比で温室効果ガスを2030年までに70%削減する目標を掲げている。今回の巨額支援は、欧州全体で進むクリーン産業ディール(Clean Industrial Deal)の目的とも合致しており、北欧におけるCCS/CDRハブの構築に向けた重要な一歩となる。
参考:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/mex_25_3044


