ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の健全化を目指す国際監視機関、ICVCMは2025年12月11日、フィンランドのPuro.earth(ピュロ・アース)を、厳格な品質基準CCPsを満たす適格プログラムとして承認したと発表した。
Puro.earthはナスダック(Nasdaq)傘下の企業であり、植林などの自然由来ではなく、工業的な技術を用いた炭素除去(CDR)に特化したカーボンクレジット発行プラットフォームだ。今回の承認により、同社の運営体制やガバナンスが国際的な高水準にあることが公的に認められた形となる。
バージョン4.2への改定で「審査合格」
ICVCMによるCCPs承認は、カーボンクレジットの品質を保証する、いわば「国際的なお墨付き」である。Puro.earthはこの称号を得るため、自身の規格を最新版の「バージョン4.2」へと改定し、以下の点を強化することで審査をクリアした。
- 透明性の向上
プロジェクト審査の過程や記録の管理体制を厳格化。 - 社会的責任の徹底
労働者の権利保護、男女平等、地域住民への配慮など、環境面以外のセーフガード(予防措置)を拡充。
これにより、バージョン4.2以降のルールに基づいて運営されるPuro.earthは、ICVCMの適格プログラムとして扱われる。
「CCPラベル」付与への道のり
ICVCMによる完全な品質保証(CCPラベルの付与)を得るには、2つの関門を突破する必要がある。
- プログラム審査
運営団体(Puro.earth)そのものの信頼性を審査(※今回ここを通過)。 - カテゴリー審査
具体的な手法(バイオ炭や直接空気回収など)ごとの計算方法や科学的根拠を審査。
今回、Puro.earthは第1関門を突破した。今後は、同社が取り扱う具体的な除去技術、方法論(メソドロジー)が第2関門の審査に入り、これに合格して初めて、発行されるカーボンクレジットに高品質の証であるCCPラベルが付与されることになる。
マイクロソフトなども利用する「技術系CDR」の雄
Puro.earthは2019年の設立以来、累計100万トン以上のCO2除去証書(CORC)を発行してきた実績を持つ。
同社のクレジットは、脱炭素化が難しい排出(残存排出)をオフセットする手段として、マイクロソフト(Microsoft)、グーグル(Google)、マッキンゼー(McKinsey)、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)といった、気候変動対策で世界をリードする企業600社以上に購入されている。
Puro.earthのジャン=ウィレム・ボーデ社長は、「今回の承認は、科学と透明性に基づいた我々の基盤が正しかったことの証明だ」と述べ、市場の成熟にはICVCMのような統一ルールが不可欠であるとの認識を示した。
ACRやVerra、Gold Standardといった主要な管理団体に加え、技術系除去に特化したPuro.earthがICVCMの承認リスト(計8団体)に加わったことで、企業の脱炭素戦略における「高品質な除去クレジット」の選択肢はより確かなものとなる。
参考:https://icvcm.org/integrity-council-confirms-carbon-crediting-program-puro-earth-as-ccp-eligible/
参考:https://puro.earth/our-blog/356-puro-earth-receives-icvcm-approval-as-eligible-carbon-crediting-programme

