Adyen、「耐久性CDR購入」と「技術開発助成」の公募開始 ClimeFiと連携し26年ポートフォリオ構築へ

村山 大翔

村山 大翔

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オランダを拠点とする世界的フィンテック企業のアディエン(Adyen)は12月11日、炭素除去(CDR)市場プラットフォームのクライムファイ(ClimeFi)を通じて、新たな提案依頼書(RFP)の受付を開始した。アディエンの2025年度気候変動対策予算を原資とし、「耐久性のあるCDRクレジットの購入」と「初期段階の技術革新に対する助成金(グラント)」の2つの経路で支援先を募集する。商業化に向けた規模拡大と、市場のボトルネック解消を同時に狙う戦略的な公募となる。

クレジット購入と開発助成の「デュアルトラック」

今回のRFPの最大の特徴は、すでに確立されつつある除去技術への「購入契約」と、将来の市場を支えるインフラや技術への「助成」を並行して実施する点にある。

耐久性炭素除去の購入(ポートフォリオ配分)

アディエンは、高い完全性と科学的根拠に基づき、CO2を恒久的に貯留できるプロジェクトを求めている。対象となるのは、2026年から2030年の間にクレジットの引き渡しが可能で、商業化への明確な進展を示せる事業者である。 採用されたプロジェクトには、500トンから4,000トンのCO2除去(tCO2)に相当する複数年の購入契約が割り当てられる予定だ。

なお、今回の公募では風化促進(Enhanced Rock Weathering, ERW)技術は対象外とされた。これはアディエンが既存のポートフォリオですでに同技術への十分なエクスポージャーを持っているためであり、ポートフォリオの技術的分散を図る意図がある。

気候イノベーション助成金(1%ファンド)

助成金トラックでは、CDRのスケーリングを加速させる取り組みを支援する。具体的には、測定・報告・検証(MRV)技術の革新、初期段階の技術開発、および市場を活性化させるためのインフラ整備などが対象となる。 この資金は、アディエンが純売上高の1%をSDGs(持続可能な開発目標)への貢献に充てる「1%ファンド」から拠出される。このファンドは、投資先の決定に従業員が関与するユニークな仕組みを持っており、単なるクレジット購入の手前にある「上流のボトルネック」を解消し、将来の供給能力を底上げする狙いがある。

2022年からの提携と今後のスケジュール

アディエンとクライムファイは2022年から提携しており、貢献ベースのアプローチで長期的な炭素除去ポートフォリオを構築・管理してきた。毎年のサイクルで新たな長期契約を追加することで、ポートフォリオの多様性と堅牢性を高めている。

今回のRFPでは、両トラックへの重複応募も可能であり、トラック間の相乗効果も奨励されている。スケジュールは以下の通り設定されており、選定結果の発表は2026年2月中旬を予定している。

企業によるCDR支援が、単なる「オフセット目的の購入」から、技術育成を含めた「エコシステム全体の支援」へと深化していることを示す事例として、日本企業にとっても参考となる動きだ。

参考:https://www.climefi.com/blog-posts/climefi-and-adyen-launch-new-dual-track-rfp-for-carbon-removal