神奈川県、一般社団法人BlueArch、UMIAILEは2025年12月9日、海中の藻場における二酸化炭素(CO2)吸収量を測定する実証実験に関する三者協定を締結した。船舶を出さずに陸上から水上・水中ドローンを連携させてデータを取得する国内初の手法を確立し、ブルーカーボンクレジット(Jブルークレジット等)の創出プロセスにおけるモニタリングコストと労力を大幅に削減する狙いだ。
今回の実証は、脱炭素市場で注目される「ブルーカーボン」の普及に向けた最大の障壁である、計測(MRV)プロセスの効率化に挑むものである。現在、藻場モニタリングの8割以上は潜水士による目視測定に依存しており、船舶の手配費用や潜水に伴う安全リスク、天候による工期の遅延などが、カーボンクレジット創出を目指す漁業関係者にとって重い負担となっていた。また、神奈川県内では海水温上昇の影響で藻場が過去30年間で約半減しており、保全活動の資金源としてカーボンクレジット収益の確保が急務となっている。
新たな解決策として導入されるのは、独自の「水上×水中」連携システムである。ホンダ発のスタートアップであるUMIAILEが開発した自律型水上ドローンが、陸上局と海中のドローンを繋ぐ中継拠点として機能する。この水上ドローンは水中翼を用いた姿勢制御技術により悪天候下でも安定した自律運航が可能だ。海中では、BlueArchが保有するブルーカーボン計測特許技術を搭載した水中ドローンが稼働し、自律的な衝突回避機能を用いて海底をスキャンする。これにより、陸上からの遠隔操作のみで高精度なデータ収集が可能となる。
三者は本技術を、神奈川県三浦市の城ヶ島におけるブルーカーボン調査に適用する。具体的には、地元の三和漁業協同組合城ヶ島支所によるクレジット創出申請を技術面から支援し、認証されたカーボンクレジット収益を藻場の再生・保全活動へ還流させる持続可能なモデルの構築を目指す。
技術の実証を通じて、安全かつ低コストな測定手法が確立されれば、資金や人員の制約からカーボンクレジット化を断念していた全国の漁業協同組合や自治体への波及効果が期待される。県は今後、本事業を通じて構築した手法をモデルケースとし、持続可能な藻場保全と脱炭素社会の実装を加速させる方針だ。

