2025年11月12日、世界的なプライベート・インベストメント企業アルディアン(Ardian)は、自然ベースソリューション(NbS)戦略ファンドに対し、複数の開発金融機関(DFI)から総額1億ユーロ(約179億円)近い資金調達を確保したと発表した。この資金は、主に排出権の創出を目的とした森林再生・生態系回復プロジェクトに投じられ、企業のネットゼロ目標達成と自然保護の両立を支援する。
開発金融機関が「高信頼性CDRクレジット」にコミット
今回の資金調達は、第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)の開催時期に合わせて発表された。ファンドの主要なコミットメント(確約)投資家には、欧州投資銀行(EIB: European Investment Bank)、プロパルコ(Proparco)、ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII: British International Investment)の3機関が名を連ねる。
- 欧州投資銀行(EIB)は5,000万ユーロ(約90億円)
- プロパルコは2,000万ユーロ(約36億円)
- ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)は1,000万ユーロ(約18億円)
これらにより、アルディアンのNBSファンド「アヴェローア(Averrhoa)」は、2025年末までにコミットメント総額約1億ユーロ(約179億円)を達成する見込みである。
40年間で8,500万トンのCO2を固定化、新興市場が中心
アルディアンと自然ベースプロジェクト専門企業アドリアダ(aDryada)の合弁事業として2023年に設立されたNBS戦略は、今後40年間で8,500万トンのCO2を大気中から隔離することを使命とする。これは主に植林、再植林、湿地およびマングローブ林の再生プロジェクトへの投資を通じて達成される計画だ。
- プロジェクト目標
二酸化炭素除去(CDR)効果のほか、生物多様性の向上と地域社会への社会経済的利益を同時に実現することを目指す。 - 投資地域
ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの新興市場や開発途上国を中心に、プロジェクトと資本合わせて15億ユーロ(約2,697億円)規模の展開が計画されている。 - 収益構造
プロジェクトを通じて創出される「高信頼性CDRクレジット」は、主にボランタリー排出削減購入契約(Voluntary Emission Reduction Purchase Agreements : VERPA)を通じて、排出量相殺を求める大企業に販売される。
カーボンクレジット市場の需要増に対応
アルディアンのインフラ部門副責任者であるローラン・ファヨラス執行役員は、「最初の1億ユーロのコミットメントは、自然再生プロジェクトにおける主要プレーヤーとなるための旅路における画期的な出来事だ」とコメントした。
また、欧州投資銀行のアンブロワーズ・ファヨール副総裁は、「このファンドは、新興市場全体で自然ベースソリューションを拡大するための重要な一歩である。我々は、気候変動への対処、生物多様性の保護、地域社会の生活向上に貢献している」と、本ファンドが持つ環境・社会的な多角的意義を強調した。
世界的にネットゼロ目標達成を目指す大企業による自然ベースソリューションへの需要が高まる中、アルディアンのNBSチームは、強固な実績と厳格なモニタリング能力を持つ開発者を選定し、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアでプロジェクトパイプラインを構築している。この動きは、信頼性の高いCDRプロジェクトへの資金供給を加速し、拡大するボランタリーカーボンクレジット市場を支えるものとなる。