ウズベキスタン、「パリ協定第6条」市場メカニズムへ前進 日本とUNDPの支援でカーボンクレジット取引制度を整備

村山 大翔

村山 大翔

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ウズベキスタン政府は、国連開発計画(UNDP)および日本政府の支援を受け、パリ協定第6条に基づく国際炭素市場への参画に向けた体制整備を加速している。経済財務省とマクロ経済・地域研究所が共催した政策対話では、同国の「第6条対応準備(A6 Readiness)」の進展と今後の課題が議論され、日本およびウズベキスタンの民間企業関係者も参加した。

7月にウズベキスタンは、国家炭素取引制度の創設を定めた新法を制定し、低炭素成長への明確な方針を打ち出した。UNDPウズベキスタン副常駐代表アナス・カルマン氏は、「第6条の実装は、国際的な気候資金を呼び込み、低炭素技術移転を促進し、国別削減目標(NDC)達成を加速する戦略的な機会だ」と述べた。

政策対話では、ウズベキスタンが第6条参加に必要な要件の一部をすでに満たしていると評価され、残る課題への対応として以下の4点が示された。

  1. 第6条関連の法制度およびインフラ整備の加速(特に省令制定と国家登録簿の構築)
  2. 関係者の能力強化(技術支援や研修プログラムを通じた育成)
  3. プロジェクト承認プロセスの迅速化(活動承認基準やITMO認可制度の整備)
  4. 「第6条初期報告書(A6 Initial Report)」の作成

この取り組みの一環として、シルダリヤ州ではエネルギー効率および低炭素化に関するパイロット事業も進行中である。経済財務省のショフゾッド・イスラモフ氏は「幼稚園や学校、病院などの社会インフラを近代化するため、ヒートポンプや高効率空調などの革新的技術を導入している。5施設での実証を通じて、快適性の向上とCO2排出削減を両立させる」と語った。

日本が主導する二国間クレジット制度(JCM)は、パリ協定第6条に沿った協力の実践的なモデルとされ、排出削減効果の定量化や技術移転の促進に寄与している。UNDPは、地球環境戦略研究機関(IGES)と連携し、ウズベキスタンの第6条対応力を評価する包括的な準備状況調査を実施しており、同国の国際炭素市場への参画に向けた重要な一歩となる。

このプロジェクトは、日本政府が支援するUNDPの「クライメート・プロミス(Climate Promise)」の一環である。日本は2021年以降、同イニシアチブに7,700万ドル(約120億円)超を拠出し、ウズベキスタンを含む28カ国・地域で気候変動対策とレジリエンス強化を後押ししている。

参考:https://www.undp.org/uzbekistan/press-releases/uzbekistan-advances-carbon-market-readiness-under-paris-agreement-undp-and-japans-support