カーボンニュートラル炭酸カルシウムの米国産化へ CarbonFreeとUnivarが供給拡大に向け提携

村山 大翔

村山 大翔

「カーボンニュートラル炭酸カルシウムの米国産化へ CarbonFreeとUnivarが供給拡大に向け提携」のアイキャッチ画像

米国で炭素循環型素材を製造するカーボンフリー(CarbonFree Chemical Holdings LLC)は10月29日、化学品大手ユニバー・ソリューションズUSA(Univar Solutions USA LLC)と、カーボンニュートラル炭酸カルシウム「エンデュロカル(endurocal®)」の北米市場供給拡大に向けた基本合意書(LOI)を締結したと発表した。両社は同素材の流通・販売網構築を共同で検討し、米国内での低炭素・循環型鉱物原料の普及を目指す。

エンデュロカルは、カーボンフリー独自の炭素回収技術「スカイサイクル(SkyCycle™)」を用いて、製鉄スラグなどの産業副産物に含まれる二酸化炭素(CO2)とカルシウムを反応させて生成される高純度(最大99%)の炭酸カルシウムだ。採掘を必要とせず、原料の段階でCO2を固定化するため、製品全体でカーボンニュートラルを実現している。

この素材は食品・医薬品・化粧品・産業製品など多様な用途に対応し、従来の輸入炭酸カルシウムに比べてコスト競争力と白色度に優れる。ユニバーは世界有数の化学品・成分流通企業として、北米全域の顧客網と物流インフラを活かし、同製品を市場に届ける役割を担う。

ユニバーの商業サステナビリティ担当副社長ケリー・ギルロイ氏は、「性能要件を満たすだけでなく環境目標に整合する素材を求める顧客が急増している。カーボンフリーと協働することで、低炭素かつ循環型の最先端原料を普及させ、持続可能な明日を築く」と述べた。

一方、カーボンフリーのマーティン・キーリー最高経営責任者(CEO)は、「米国製造業は、性能を維持しつつ経済的で持続可能な国産素材を求めている。ユニバーとの提携により、スケールメリットを活かしてカーボンニュートラル炭酸カルシウムを広く供給し、米国製造業の強靭なサプライチェーン構築に貢献する」と語った。

両社は今後、共同マーケティングや技術サポート、顧客向けコンサルティングを展開し、需要に応じたエンデュロカル供給量を確保する方針だ。物流効率やコスト削減、素材トレーサビリティの強化を通じ、持続可能な製造モデルの確立を目指す。

カーボンフリーは2006年創業のテキサス州拠点企業で、CO2排出源から炭素を回収し、高付加価値化学品へ転換する技術を開発。2026年には米製鉄大手U.S.スチールとの協働で、年間5万トン超のCO2を固定し10万トン規模の高純度炭酸カルシウムを生産する商業施設の稼働を予定している。

この提携は、米国内での炭素除去型素材サプライチェーンの確立に向けた一歩であり、Scope3排出削減を目指す製造業の動きを加速させるとみられる。

参考:https://www.globenewswire.com/news-release/2025/10/29/3176636/0/en/CarbonFree-and-Univar-Solutions-Partner-to-Expand-American-Made-Supply-of-Carbon-Neutral-Mine-Free-Calcium-Carbonate.html