地球のCO2吸収力が急減 「自然の限界」示す科学者報告 COP30での決断迫る

村山 大翔

村山 大翔

「地球のCO2吸収力が急減 「自然の限界」示す科学者報告 COP30での決断迫る」のアイキャッチ画像

11月30日からブラジル・ベレンで開かれる国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を前に、21カ国70人以上の科学者がまとめた最新報告書「10 New Insights in Climate Science 2025/2026(気候科学の10大新知見)」が発表された。報告書は、森林・土壌・海洋といった自然の炭素吸収源(カーボンシンク)の能力が急速に弱まり、地球温暖化の抑制目標を危うくしていると警鐘を鳴らしている。

報告によると、北半球の森林や土壌では高温や干ばつ、山火事が相次ぎ、二酸化炭素(CO2)吸収力が低下している。2023年の地上炭素吸収量は前年の3.9±1GtCから2.3±1GtCへと約4割減少し、カナダの大規模火災ではEU全体の化石燃料排出量に匹敵する0.65GtCが放出されたという。

海洋もまた深刻だ。2023〜24年にかけて世界の海面温度は観測史上最高を更新し、海洋熱波が魚類やサンゴ礁に壊滅的な被害を与えている。海水温上昇によりCO2吸収能が低下し、熱波発生時には吸収量が平均8%減少した。

報告書は「自然の吸収力だけに依存するのは危険だ」と強調し、技術的な炭素除去(CDR)を「排出削減と並行して進めるべき」と提言した。ただし、土地利用型CDRは農業や生物多様性と競合するおそれがあり、持続可能な導入指針の策定を急ぐよう求めている。

ポツダム気候影響研究所のサビーネ・フス氏は「森林や土壌は長年、私たちの“炭素の後始末”を担ってきたが、その能力が限界に達しつつある」と述べ、各国に抜本的な排出削減と除去技術の両輪による行動を促した。

報告はまた、気候変動が引き起こす複合リスクとして、地下水の枯渇、感染症の拡大、労働生産性の低下を指摘。追加の1℃上昇で熱ストレスにさらされる人口が8億人を超える可能性があるとした。

地球規模の炭素吸収力の鈍化は「残りの炭素予算」の縮小を意味し、各国の排出目標をより厳格に見直す必要がある。報告書は、COP30を「約束から実行への転換点」と位置づけ、化石燃料依存の脱却、自然生態系の保全・回復、そして高品質なカーボンクレジット市場の整備を優先課題として提起している。

参考:https://10insightsclimate.science/