AIRCO、CO2由来合成燃料が米国防省の実証でディーゼル同等性能を達成

村山 大翔

村山 大翔

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陸・海・空すべての軍用用途で運用可能性を証明、脱炭素燃料の軍事導入に前進

米スタートアップAIRCO™は、米国防総省(DoD)と共同で実施した一連の実証試験において、同社のCO2由来合成燃料「AIRMADE® Fuel」が従来の化石燃料と同等の性能を発揮したと発表した。陸・海・空の各ドメインで検証が行われ、全ての試験で成功を収めたのは業界初となる。

陸上試験:ポラリスMRZRにてディーゼル代替燃料を検証

米陸軍工兵司令部とDIU(Defense Innovation Unit)支援のもと、ニューヨーク州ウェストポイントで開催された「Branch Week」にて、ポラリスMRZR戦術車両にAIRMADE® Fuelを搭載。ディーゼルと同等の出力を示しながら、排気煙の可視性が著しく低減された。この試験は、将来的な軍用原子炉と合成燃料製造の連携可能性調査の一環でもある。

海上試験:2度にわたり小型艇での性能を確認

カリフォルニア州サンアントニオ湖で行われた初回試験では、SeaFox II RHIB(5.1m艇)が6時間以上航行。バージニア州の第2回試験では、300馬力エンジンを搭載した7.0mのZodiac RHIBが加速・速度テストに参加。いずれも従来燃料と同等の航行性能を示し、視認できる排気が抑制された

空中試験:100%CO2由来SAFで無人航空機が初飛行

米空軍の「Project FIERCE」と連携し、史上初となるCO2由来合成ジェット燃料による無人航空機の飛行に成功。この成果は、軍事航空分野におけるSAF(持続可能航空燃料)導入の可能性を大きく前進させるものであり、将来の作戦エネルギーの自給自足性を高める鍵とされる。

宇宙用途も視野に、NASAとの協業も進行中

AIRCOは現在、NASAとの提携を通じて宇宙探査ミッション向けの燃料応用研究も進行中。大気圏外での資源循環や燃料合成技術の応用が期待されている。

同社CEOのグレゴリー・コンスタンティン氏は、「この技術は、戦地や僻地においても現地で燃料を製造・活用できる”戦力倍増装置”になり得る」と述べ、合成燃料が軍事エネルギー戦略の中核技術となる可能性を強調した。

参照:https://www.businesswire.com/news/home/20250415595269/en/AIRCO-and-U.S.-Department-of-Defense-Successfully-Complete-First-of-its-Kind-Demonstrations-Using-Its-CO-Derived-Drop-In-Fuel