米クロリス・ジオスペーシャル(Chloris Geospatial)は7月7日、森林の炭素量や生態系の変化を衛星データで計測する技術をさらに拡大するため、シリーズAで850万ドル(約13億5,000万円)を調達したと発表した。新たな資金は、欧州拠点の設立、開発チームの拡大、森林由来カーボンクレジットのモニタリングや報告支援に活用する。カーボンクレジット市場で信頼性と透明性を高める技術として期待されている。
今回の資金調達はFuture Energy Ventures(FEV)が主導し、AXA IM AltsやAt One Ventures、Cisco Foundation、Counteract、Orbia Venturesも参加した。
クロリスは、人工衛星のデータとAIを組み合わせ、森林の炭素量の変化を世界中で過去にさかのぼって計測できる技術を開発している。この技術を使うことで、森林保護や再生によるカーボンクレジットの発行時に必要な「どれだけ炭素を減らしたのか」という証明を正確かつ低コストで行うことができる。
マルコ・アルバーニCEOは「気候変動対策を進めるには、誰もが安心して行動できるツールが必要だ。クロリスの技術はその手助けとなり、今回の投資でさらに広げていく」と述べた。
FEVのパトリック・エルフトマン氏は「クロリスの技術は、信頼できるカーボンクレジット市場を作る上で欠かせない。森林の炭素量を独立・透明・低コストで測れることは大きな変化をもたらす」と評価した。
AXA IM Altsのアダム・ギボン氏も「自然資本を守りながら持続的に管理するには、正確な測定が重要だ。クロリスへの支援はその考えに基づいている」と話した。
近年、企業が自社のサプライチェーンでの森林破壊リスクを減らすために、衛星データを活用して森林の炭素量を確認しながら管理する動きが加速している。クロリスの技術は、カーボンクレジットの発行だけでなく、GHGプロトコルに沿った排出量・削減量の報告にも活用されている。
今後クロリスは欧州での活動を強化し、森林の炭素量を正確に測る基準づくりを進め、カーボンクレジットの質の向上と供給量の増加を目指す。気候変動対策の現場では「どれだけ炭素を減らせたのか」が問われており、信頼できるデータの提供が今後の市場成長の鍵となる。
クロリスが欧州拠点の正式稼働時期や、森林カーボンクレジットの大規模な取引事例でどのように使われるかが次の注目ポイントとなる。