三井物産は10月22日、タイ国営石油会社PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)が運営するタイ湾・アーティット(Arthit)ガス田で、同国初となる二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトに参画すると発表した。操業開始は2028年を予定し、年間最大100万トンのCO2を貯留する計画だ。
三井・MOECOが出資参画 JCM連携で日タイ協力を強化
本プロジェクトには、三井物産の完全子会社である三井石油開発(MOECO)が参加し、さらにその子会社MOECOタイランドを通じて4.76%の権益を保有する。MOECOタイランドは1998年以来、アーティットガス田の権益を4%保有しており、長年にわたりタイの洋上資源開発に関与してきた。
アーティットガス田はタイ国内天然ガス需要の約8%を供給する重要拠点で、今回のCCS導入により既存の生産を維持したままCO2の地下貯留を実現する見通しである。運営主体であるPTTEP(出資比率80%)、米シェブロン・タイランド(16%)、MOECOタイランド(4%)が共同で推進する。
「2050年ネットゼロ」へ 日本の支援制度が後押し
三井物産とMOECOは2022年度、経済産業省の「二国間クレジット制度(JCM)インフラ整備調査事業」に採択され、タイでのCCS実現可能性調査を実施してきた。その成果が今回の正式参画につながった形だ。
三井物産は2050年までのネットゼロ実現を掲げており、本案件はその一環として位置づけられる。プロジェクトは、CCS技術を既存のガス田運用に統合できる「高い経済・技術的実現性」を示すモデルケースとされ、今後アジア全域への展開も視野に入れる。
東南アジアの脱炭素化へ 安定供給と両立
MOECOは1969年の設立以来、主にタイ周辺での洋上探鉱・開発に注力してきた。今回のCCS参画は、化石燃料採掘中心だった従来の協力関係を、炭素管理・削減フェーズへと進化させるものだ。
三井物産は声明で「上流分野で培った知見を活用し、アジアのCCS展開を加速させることで、持続可能で安定的なエネルギー供給基盤の構築に貢献する」と述べた。
本事業は、JCM枠組みを通じた日タイ間のクレジット創出にもつながる見込みであり、日本企業の技術移転と炭素市場拡大の両面で波及効果が期待される。
参考:https://www.mitsui.com/jp/en/topics/2025/1252244_14859.html