米国環境保護庁(EPA)は10月21日、エクソンモービル(Exxon Mobil)の炭素貯留プロジェクト「ローズ(Rose)」に対し、地下圧入井戸の運用を認可する「クラスVI」許可を3件発行した。場所はテキサス州ジェファーソン郡で、最大年間500万トンの二酸化炭素(CO2)を地中に封じ込める計画だ。全期間13年で総量5,300万トンのCO2を貯留できる見込みで、米国湾岸地域における大規模炭素管理インフラ整備を後押しする動きとして注目されている。
EPAのスコット・メイソン地域管理官は声明で「テキサス州は数十年にわたり地下圧入井戸を安全に管理し、飲料水を守ってきた。クラスVI井戸でもその成功を続けると確信している」と述べた。さらに「この許可はエクソンモービルのローズ炭素貯留プロジェクトを前進させ、雇用を創出し、先進技術によって健康と環境を守るものだ」と強調した。
今回の許可により、エクソンモービルは州の承認を受けていた試験井3本を本格的なCO2圧入井に転換できる。1本あたり年間約110万〜167万トン、3本合計で年間最大500万トンのCO2を地中に注入可能となる。13年間で累計5,300万トンの貯留が見込まれ、これは自動車約1,100万台分の年間排出量に相当する。
同社の低炭素ソリューション事業を率いるバリー・イングル社長は、「EPAとトランプ政権の支援に感謝している。今回の許可は、安全で恒久的なCO2貯留を通じて米国のエネルギー産業を強化する重要な一歩だ」と述べた。さらに「我々は厳格な基準を満たすために尽力してきた。炭素回収・貯留(CCS)は成長と雇用、経済機会を生み出すものであり、その展開を主導できることを誇りに思う」と語った。
EPAによるクラスVI井戸の許可制度は、安全飲料水法に基づき、CO2を深部地層に長期封入するプロジェクトを規制する枠組みである。今回の認可にあたり、EPAは立地の地質評価、水質保護、地震リスク、緊急時対応など、厳格な環境保全要件の遵守を求めた。
ローズ炭素貯留プロジェクトは、エクソンモービルが推進する「ロー・カーボン・ソリューションズ(Low Carbon Solutions)」事業の一環であり、同社が湾岸地域全体に構築を進めるCCSハブ網の一部を成す。この地域は世界でも屈指の産業排出集中地帯であり、今回の認可は米国南部における炭素回収・除去(CDR)技術の実装を加速させる契機となる。
EPAは今年8月に許可案を公示し、オンライン公聴会を経て最終決定に至った。最終許可文書や市民意見への回答は、同庁の公式ドケットに掲載されている。