米国の炭素転換技術企業HYCO1と、マレーシア国営石油会社PETRONAS傘下のMalaysia LNGは、マレーシア・サラワク州ビントゥルで画期的なCCU施設の共同開発に向けた覚書(MoU)を締結した。
同プロジェクトは、回収したCO2を原料として燃料や化学品を製造するもので、従来のCCSとは異なる循環型モデルとして注目されている。
CO2を原料に変えるHYCO1の独自技術「CUBE™」
プロジェクトの中核には、HYCO1が開発したCUBE™技術がある。この技術はCO2を水素と一酸化炭素からなる工業用シンガス(合成ガス)に変換する画期的なプロセスで、これにより高価な天然ガスをCO2で代替できるようになる。
「これはすべての関係者、そしてマレーシア全体にとって非常にエキサイティングな一歩」と、HYCO1のCEOグレゴリー・カー氏はコメントしている。
「廃棄物」ではなく「資源」としてのCO2利用
CCSがCO2を地下に埋設する貯留型モデルであるのに対し、今回のCCUはCO2を原料化し、再資源化する「循環型炭素経済」の象徴的なモデルである。
両社は今後、低炭素型シンガスの生産最適化に向けた実現可能性調査(FS)を共同で進める。完成すればアジア最大級となる可能性が高く、2029年の稼働を目指す。
ネットゼロと経済性を両立する新たな産業モデル
このCCU施設では、炭素排出削減と経済的価値創出を両立させることが期待されている。従来の排出権ビジネスとは異なり、「脱炭素=コスト」ではなく、「脱炭素=新しい価値創出」を実現する産業構造への転換が進む。
MLNG CEOのモハメド・シャズワン・アブドゥラ氏も、「この提携は産業スケールでの持続可能性と収益性の両立を示すもの」と強調した。