スイス、カーボンマネジメント制度を概観する新ファクトシートを発表

村山 大翔

村山 大翔

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目次
  1. 連邦環境局が公開、CCS・CDR推進に向けた法制度や支援策を整理

連邦環境局が公開、CCS・CDR推進に向けた法制度や支援策を整理

スイス連邦環境局(FOEN)は2025年5月、新たなファクトシートを公開し、同国におけるCCS、CDRなどのカーボンマネジメント関連制度の全体像を明らかにした。CCUSに関わる事業者や政策関係者にとって、法的条件を一覧化した実務的な指針となる。

スイスでは、2022年に連邦評議会がCCUS導入の国家戦略を「2030年までの先行導入フェーズ」と「2050年までの本格拡大フェーズ」の2段階で整理し、気候技術としての重要性を早期から位置づけてきた。

2025年1月には「気候・イノベーション法(CIA)」が施行され、2050年ネットゼロ目標が法制化された。CIAでは、脱炭素ロードマップを提出する企業を対象に資金支援を提供。特に、排出量取引制度(ETS参加企業には、CCUSプロジェクトへの助成が可能となっている。

また、ETS義務を負う事業者は2025年からCCSによる削減分をカーボンクレジット化でき、2022年以降は燃料輸入業者がスイス国外でのCO2貯留も自国排出のカーボンオフセット対象として認められるようになった。

ごみ焼却施設についてはETSを免除する代わりに、2030年までに年間10万トンのCO2を回収可能なCCS設備の導入が義務付けられている。

制度面では、スイス国内でのCO2輸送は危険物扱い、処分目的のCO2は廃棄物として分類される一方、パイプラインや地下貯留については依然として法整備が未了であり、同ファクトシートでは国際連携の枠組み整備と許認可制度の見直しも今後の課題として指摘されている。

今回のファクトシートは、同国のカーボンマネジメント政策の現状と今後の改善点を体系的に示す重要資料として位置付けられる。

参照:https://ch.linkedin.com/company/federal-office-for-the-environment?trk=public_post-text