オランダDACスタートアップのSkytreeは、ドイツの研究機関Forschungszentrum Jülichが主導するPower-to-Xプロジェクトにおいて、自社のDAC(直接空気回収)技術「Stratus」が採用されたと5月20日に発表した。2026年第1四半期からドイツでの実証試験が開始され、将来的にはアフリカの砂漠地帯での実環境テストも計画されている。このプロジェクトは、太陽光発電の余剰エネルギーをe-燃料として貯蔵・輸送可能な形に変換することを目的としている。
Forschungszentrum Jülichとの連携のもと、SkytreeのStratusシステムは、大気中からCO2を回収し、それを水とともに反応させてe-燃料(グリーンメタノール)を生成する役割を担う。グリーンメタノールは、再生可能エネルギーと大気由来のCO2から製造されるため、燃焼しても追加のGHG(温室効果ガス)を排出しない。
同システムは、コンパクトなCO2液化技術と統合され、回収したCO2を現地で液体燃料へと変換する。反応工程には固体酸化物電解セル(SOEC)を用い、生成された合成ガス(COと水素)からメタノールを製造する。
Stratus DACの特長は、メタノール合成に必要なCO2と水の両方を大気から供給できる点である。これにより、従来水資源の乏しい砂漠地域でも、再生可能エネルギーさえあれば持続可能な燃料生産が実現可能となる。
第1段階ではドイツ・Jülichの研究施設でシステム性能の検証と燃料変換プロセスの最適化が行われ、続く第2段階では、アフリカの砂漠地帯にて実環境下での耐久性と効率性が評価される予定だ。
このプロジェクトは、太陽エネルギーの豊富な地域での燃料生産と、それをエネルギー需要の高い地域へと輸送するグローバルな「クリーンエネルギーブリッジ」の構築を見据えている。
SkytreeのOt Messemaker氏は、「分散型DAC技術を活用した本プロジェクトは、持続可能なe-燃料の量産化に向けた現実的な道筋を示すもの」と語っている。