EU、石油・ガス大手44社にCO2貯留を義務化 2030年までに年間5,000万トンの貯留能力確保へ

村山 大翔

村山 大翔

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欧州委員会は5月22日、主要な石油・ガス企業44社に対し、2030年までに年間5,000万トンのCO2を貯留する能力の構築を義務付ける決定を発表した。これは「the EU’s Industrial Carbon Management Strategy(産業カーボンマネジメント戦略)」と「the Clean Industrial Deal(クリーン産業協定)」の一環で、EU全体の脱炭素化を加速させる狙いがある。

この新たな規制は、EUの「Net-Zero Industry Act」の枠組みに基づき、CO2の恒久的かつ安全な地中貯留を進めることを目的としている。欧州委員会は、2020年から2023年の石油・ガス生産量に基づいて、企業ごとに貯留義務量を設定した。

対象となるのは、オーストリアのOMV Petrom、オランダのTotalEnergies EP Nederland、ルーマニアのSNG Romgazなど44社。各社は2025年6月末までに貯留計画を提出し、2030年末までに稼働可能な注入サイトを確保する必要がある。

貯留義務はCO2の地中貯留にとどまらず、関連する回収・輸送インフラも含まれる。これらは加盟国によって「Net-Zero Strategic Project」として指定され、優先的な許認可や資金支援が適用される。必要な設備は、EUのCCS指令(2009/31/EC)に準拠して設計・運用される。

企業は単独での開発だけでなく、他社や投資家、第三者のプロジェクトと協力する形でも目標達成が認められる。これにより、CCS分野への新規投資や国際的な連携も活性化が見込まれる。

欧州委員会の気候行動総局長カート・ヴァンデンベルグ氏は、「炭素回収は、エネルギー集約型産業の排出削減と恒久的な除去のための戦略の一部である」と述べ、産業界の技術力と資金を活用した脱炭素化の加速に期待を寄せた。

この施策は、EUが掲げる2050年の気候中立目標に向けた重要な一歩となる。

参考:https://climate.ec.europa.eu/news-your-voice/news/commission-identifies-eu-oil-and-gas-producers-provide-new-co2-storage-solutions-hard-abate-2025-05-22_en