ニュージーランド政府、排出量取引制度(EYS)の市場統治を強化へ

村山 大翔

村山 大翔

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ニュージーランド政府は5月28日、排出量取引制度(ETS)の市場統治強化策を発表した。主導するサイモン・ワッツ気候変動相によれば、ETSの信頼性向上と市場健全化が目的で、取引情報の透明性向上や市場行動規範の導入などが柱となる。

ETSはニュージーランドの温室効果ガス(GHG)削減政策の中核であり、効果的に機能させるためには健全な市場統治が欠かせない。今回の改革では、以下のような措置が導入される。

  • 取引プラットフォームに対し、価格および取引量の報告・記録を環境省に義務付け。
  • 参加者に対し、取引情報をETS登録簿に記録することを義務付け。
  • 気候変動対応法に市場行動義務を導入し、価格操作や誤認を招く行為を禁止。
  • 環境省や金融市場庁(FMA)による情報収集と共有を可能に。

これにより、従来は不透明だったETS市場の可視性が向上し、市場操作などの不正リスクを抑制することが期待される。

政府は、コストと規制負担を最小限に抑える方針のもと、前政権で検討された政府主導の取引所設置などは採用せず、既存の市場構造を尊重した形での改革を選択した。

また、これに合わせてETSの年次設定見直しに関する意見募集も開始された。対象は2026〜2030年のユニット供給上限や価格統制設定などで、最終決定は9月末を予定しており、2026年1月から施行される見込みだ。

参考:https://environment.govt.nz/news/strengthening-ets-market-governance/