炭素除去(CDR)ファイナンスを手がける米アルティチュード(Altitude)は9月22日、主力となる金融ファシリティ「アセント1(Ascent 1)」の規模を従来の5万トンから25万トンへ拡大したと発表した。5倍増となる今回の拡充により、同社は世界有数のCDR専業金融機関としての地位を確立し、永続性と拡張性を備えた高品質なカーボンクレジットの普及に向けた長期的支援を強化する。
アセント1は、長期購入契約と独自の「構造化調達戦略」を組み合わせ、資本を効率的に炭素除去事業に投入する仕組みを特徴とする。今回の拡大により、サプライヤーにとって価格の安定性、流動性、長期的な収益基盤が強化され、大規模プロジェクトの投資判断を後押しする狙いがある。
アルティチュードのダニエル・ベンジャミン・シュルツ最高経営責任者(CEO)は「25万トン規模への拡大は、CDR業界全体の一歩前進を意味する。需要の明確なシグナルを送ることで、供給側に投資と拡大の自信を与え、気候課題に必要な規模での供給を可能にする」と述べた。
アセント1は引き続きバイオマス系除去技術を重点支援分野とし、ピューロアース(Puro.earth)、バイオフラックス(BioFlux)、カーボン・ドローダウン・イニシアチブ(Carbon Drawdown Initiative)など国際的な先行企業や金融機関と連携する。さらに、サプライ側ではクリスタルトレード(CrystalTrade)、需要側ではクライムファイ(ClimeFi)やカーボンクレジット取引プラットフォームのシーゼル(CEEZER)とも協力している。
クライムファイのセバスチャン・デワラCEOは「今回の拡充は、CDR業界にとってまさに適切なタイミングで適切なシグナルを送った。大規模調達へのコミットメントが供給者の財務基盤を安定させ、産業規模での気候インパクトを加速させる」と指摘した。
アセント1の25万トン規模への拡張は、パイロット段階にとどまっていたCDR事業を産業展開へと進めるための「橋渡し」として位置づけられる。
参考:https://www.altitudecarbon.com/news/altitude-expands-ascent-1