ノルウェー国営石油会社エクイノール(Equinor)と米マイクロソフト(Microsoft)は9月17日、二酸化炭素(CO2)の回収・輸送・貯留(CCS)および炭素除去(CDR)クレジットに関する戦略的提携を拡大すると発表した。対象地域は北西ヨーロッパと米国で、両社はデジタル技術とエネルギーインフラを組み合わせ、カーボンクレジット市場の拡大を目指す。
マイクロソフトはすでに世界有数のカーボンクレジット購入者であり、今回の合意により調達規模をさらに拡大する見通しだ。エクイノール上級副社長のグレテ・トヴェイト氏は「CO2輸送・貯留に強みを持つエクイノールと、カーボンクレジットの大口買い手かつ追跡デジタル技術を持つマイクロソフトが補完的に協力することで、炭素バリューチェーンを加速させる」と述べた。
今回の提携は、両社がすでに関与している「ノーザンライツ(Northern Lights)」プロジェクトを基盤に拡張される。同プロジェクトはエクイノール、トタルエナジーズ、シェルの3社が共同で推進しており、世界初の越境型CO2輸送・貯留事業として注目されている。ノルウェー政府が主導するフルスケールCCS計画「ロングシップ(Longship)」の一環で、オスロ・フィヨルド地域の産業施設から排出されるCO2を液化し、西海岸のターミナルへ輸送した後、北海の海底2,600メートルに貯留する仕組みだ。
マイクロソフトは2020年から同事業を支援し、デジタル追跡システムの提供や欧州でのCDRポートフォリオにおける貯留契約を結んできた。さらに直近では、ノルウェーの廃棄物発電会社ハフスルンド・セルシオから110万トン分のカーボンクレジットを購入する契約を発表。同社が建設中のCCS設備は年間40万トンのCO2を捕捉し、ノーザンライツに送る計画である。
エクイノールとマイクロソフトの協業強化は、日本市場にとっても示唆的だ。欧州発のCCS・CDRクレジット供給網が拡大することで、調達の多様化を模索する日本企業にとって新たな選択肢となり得る。特に2030年カーボンネガティブを掲げるマイクロソフトの取り組みは、需要側からの牽引役として世界市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。
両社は今後、北欧と米国での取り組みを通じて、規模拡大とコスト低減を図るとしており、カーボンクレジットの信頼性と透明性を担保する技術基盤の構築が次の焦点となる。
参考:https://carbonherald.com/equinor-and-microsoft-deepen-ties-on-carbon-capture-transport-and-storage/