地球環境賞「Earthshot Prize」受賞のカーボンクレジットデベロッパー、ブーミトラ(Boomitra)は、7月29日、ボツワナで初のバイオマス炭素除去・貯留(BiCRS)プロジェクト「Oasis(オアシス)」を始動した。侵略的な灌木の伐採と地下埋設によって、炭素を100年以上大気に戻さずに固定する。初期段階でCO2を20万トン以上削減し、1万ヘクタールの草地を回復させる計画だ。
ブーミトラは、これまで土壌炭素を中心とした炭素除去(CDR)事業で世界10か国以上に展開してきたが、今回初めてバイオマスを用いたCDRに乗り出した。新プロジェクト「Oasis」は、アフリカ南部で深刻化する灌木の過剰繁茂(ブッシュエンクローチメント)に対処するものだ。
灌木は草原を覆い尽くし、生物多様性や家畜の生産性を低下させ、野火のリスクを高める。従来の焼却処理や化学薬品による対策は、環境負荷やコストが高く、地域住民には現実的ではなかった。
ブーミトラの新しい方法では、伐採した灌木を乾燥・圧縮して密封バイルに加工し、酸素のない地下に埋設する。この状態では炭素が大気に戻らず、100年以上の長期固定が可能になる。インフラ不要で遠隔地にも導入できるため、アフリカや中南米などグローバルサウスでの拡大が期待されている。
同社によると、第1フェーズでは約1万ヘクタールの草地を再生し、10年間でCO2を20万トン以上除去する予定だ。プロジェクトは、炭素除去の国際標準Puro.Earthの予備評価に合格しており、バイオマスの量や土壌からの温室効果ガス排出をモニタリングする仕組みも整っている。
現地では、牧草地の再生を専門とするブラーマンズ・ボツワナ(Brahmans Botswana)と、ナミビアの環境コンサル企業ナミビア・リソース・コンサルタンツ(Namibia Resource Consultants)が協力し、地域に根ざした取り組みを進めている。
ブーミトラの創業者アーディス・ムーサリーCEOは「これは次のステップだ。私たちはすでに10万以上の農家と連携してきた。今後はこの技術で、気候問題だけでなく土地や人々の暮らしにも貢献したい」と述べた。
将来的には、プロジェクトの対象地を100万ヘクタール以上に広げる計画で、同社はより多くのカーボンクレジットを発行しながら、農村の雇用創出や生態系の回復にも寄与していく考えだ。