金融庁、「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会報告書」を公表

村山 大翔

村山 大翔

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金融庁は2025年6月20日、カーボン・クレジット取引の透明性・健全性に焦点を当てた「金融インフラのあり方等に係る検討会報告書」を公表した。

2024年6月に早稲田大学の根本直子教授(検討会座長)を中心に設置された検討会が、計7回のヒアリング等を経て取りまとめたものである。

2026年度に本格稼働予定の排出量取引制度(GX-ETSを見据え、投資家保護を目的に制度設計や市場慣行の見直しを促す内容となっている。

検討会報告書

報告書ではまず、カーボンクレジットが脱炭素化に向けたインセンティブとして期待されており、2026年度から排出量取引制度が始動すると取引が一層拡大・多様化するとの見通しが示されている。

検討会は2024年6月にスタートし、金融機関や事業者へのヒアリングを通じて市場実態を把握、計7回にわたり議論を重ねてきた 。

報告書は特に取引の「透明性」と「健全性」を担保するため、以下の点を強調する、

  • クレジットの種類・品質を明示した説明責任
  • 評価機関の信頼性確保
  • 取引の標準化
  • ブロックチェーン等テクノロジーの適用とリスク管理

参加者からは「投資家保護の観点から当該情報開示が必須」といった声が出ており、これらの実装に向けた制度整備が急務との指摘が複数回あった。

経緯の整理

2024年6月10日に第1回が開催されたのち、2025年5月29日までに第7回を開催し、東京証券取引所でのカーボン・クレジット取引開始(2023年10月11日)などの市場動向を踏まえた。同期間中に公表されたIOSCO(国際証券監督官機構)の報告書や、米英の原則も参考に、国内実態との整合性を検討してきた。

今後の動向

今後、金融庁は「信頼性評価」「標準化ルール」「テック活用ガイドライン」などを令和7年度中に検討・策定する方向であり、排出量取引制度の本格稼働直前となる令和8年4月までに形にする見通しである。

また、次期国会で関連法案の進展や、東京証券取引所での取扱市場の拡大動向にも注目が集まる。

総まとめ

金融庁は本報告書を通じ、制度市場への移行期にあるカーボンクレジット取引に関し、透明性・健全性を確保する金融インフラ整備の必要性を改めて宣言した。

今後は制度設計論争から実装段階に移る鍵として、令和8年4月の枠組み整備に注目が集まる。

参考:https://www.fsa.go.jp/singi/carbon_credit/siryou/20250620/20250620.html