英エネルギー回収施設で新技術実証 Nuada、CO2回収施設の試験運用を開始

村山 大翔

村山 大翔

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英国のエネルギー回収事業者エンフィニウム(enfinium)は9月4日、炭素回収技術企業ヌアダ(Nuada)と共同で、ウェストヨークシャー州フェリーブリッジ1号エネルギー回収(EfW)施設において、次世代型炭素回収パイロット設備の稼働を開始したと発表した。試験運転は少なくとも6か月間行われ、EfW分野におけるヌアダ技術の初の産業規模実証となる。

エンフィニウムは英国で6か所のEfW施設を運営しており、今回の実証は全施設への炭素回収・貯留(CCS)導入に向けた重要な一歩だとしている。エンフィニウムのエンジニアリング・建設担当副社長サイモン・フォーショー氏は「廃棄物発電にCCSを導入することは、リサイクルできない廃棄物を脱炭素化し、ネットゼロ達成に必要な大規模な炭素除去を実現するために不可欠だ」と述べた。

今回のパイロット設備の中核には、ヌアダが開発した金属有機構造体(MOF)を用いた炭素回収技術がある。排ガスからCO2を真空スイング法で分離することで、従来技術よりも効率的かつ低エネルギーでの回収を可能にする。商業規模展開に向けてコスト削減効果が期待されている。

EfW施設は特有の強みとして、処理される残余廃棄物の約半分が生物由来(バイオジェニック)である点がある。これらは元来CO2を吸収しているため、CCSを適用すれば排出を防ぐだけでなく、大気中からの実質的な炭素除去(CDR)が可能になる。こうしたネガティブエミッションの仕組みは、政策当局や業界からも注目を集めている。

ヌアダの共同CEOコナー・ハミル博士は「我々のCCUS技術は、既存の廃棄物由来CO2を効率的に価値化することで、EfW分野の脱炭素を加速できる」と指摘した。

気候変動委員会(Climate Change Committee)やオックスフォード・エネルギー研究所(The Oxford Institute for Energy Studies)の分析によれば、EfW分野は2050年までに年間500万〜800万トンのCO2除去に貢献できる可能性がある。これは英国のネットゼロ達成に不可欠な柱の一つとされる。

エンフィニウムはすでにカーボンリムーバルの信頼性確保のため、カーボンクレジット登録機関アイソメトリック(Isometric)と連携を開始しており、今回のパイロット実証が今後の商業展開や市場でのクレジット発行に直結する可能性がある。

実証は2026年春まで続けられる予定で、その成果が英国のEfW分野におけるCCS・CDR導入の成否を左右する重要な試金石となる。

参考:https://nuadaco2.com/nuadas-next-generation-carbon-capture-technology-goes-live-at-enfiniums-energy-from-waste-plant/