英ガトウィック空港、自然再生型CDR1万トンを確保 残余排出のオフセットに充当

カーボンクレジット.jp 編集部

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英ガトウィック空港の運営会社ガトウィック・エアポート(Gatwick Airport Limited、GAL)は、100万ポンド(約2億1,500万円)を投じ、自然再生型のCDR1万トンCO2eを確保したと発表した。仲介は非営利のワイルダーカーボン(Wilder Carbon)で、ケントとサマセットの2つのワイルドライフ・トラストが手掛ける生息地再生プロジェクトに資金を充てる。

この除去量は、2030〜2039年に発生する削減不能な残余排出のオフセットに充当される。排出削減が構造的に難しい空港運営事業者が、残余排出の処理手段をネットゼロ目標年の10年前に先行調達した事例である。

投資の概要

GALは2億5,000万ポンド(約537億5,000万円)規模の資本プログラムで排出を可能な限り削減したうえで、削減しきれない残余分の処理にCDRを用いる。今回の100万ポンドは、その残余分の一部を対象とする。

対象プロジェクトは2件。ケントのアイアンハースト・バレー自然保護区では、耕作地・牧草地を生物多様性の高い草地、湿性氾濫原の草地、混交広葉樹林へと転換する。サマセットのハニーガー農場では、旧酪農場80ヘクタールを放牧湿地と湿原に再生し、健全な泥炭の中に炭素を長期的に固定する。

いずれもワイルダーカーボンが定める「Wilder Carbon Standard for Nature and Climate」に準拠する。

残余排出への位置づけ

GALは2030年までに、自社の直接管理下にあるScope 1・2排出のネットゼロを掲げる。ただし2030年時点でも、代替技術が未確立であるなどの理由で一部の排出が残る。今回の調達は、この残余排出を2030年代を通じて相殺するための先行投資である。

GALが加盟する航空業界連合Sustainable Aviationは今年、温室効果ガス除去(GGR)に関するAdvanced Market Signalを発出し、加盟各社が200万ポンド超(約4億3,000万円超)を投じてGGRカーボンクレジットを購入する方針を示している。残余排出の処理を早期に確保する動きは、航空セクターで広がりつつある。

一方で、検証済みの気候・自然便益が生み出されるのは今後数十年にわたるとされ、資金拠出と便益発現の間には時間差がある。ワイルダーカーボンは、この早期投資こそがプロジェクト立ち上げに必要な資金を解放すると説明する。

編集部の視点

本件は、排出削減が構造的に難しい空港運営事業者が、残余排出の処理手段を目標年の10年前に確保した先行事例として位置づけられる。

評価できるのは順序である。GALは2億5,000万ポンドの削減投資を先行させ、削減しきれない分にのみ除去を充てる構図をとった。オフセットを削減の代替ではなく補完として用いる設計は、ネットゼロの実装として筋が通る。

鍵を握るのは、泥炭と森林による炭素固定がどれだけ長期にわたって維持されるかという永続性である。本件の除去量は2030〜2039年の残余排出に充当される一方、便益の発現は数十年先に及ぶ。湿地や森林の炭素は、土地管理の継続性や気候条件の変化に左右されやすく、固定の持続性は調達時点では確定しない。

自然再生型CDRを残余排出の相殺手段として用いる場合、その有効性は、固定された炭素が想定期間にわたり維持されるかどうかに最終的に左右される。本件の成否を分けるのは、投資規模ではなくこの一点である。

参考:https://www.mediacentre.gatwickairport.com/news/gatwick-airport-limited-supports-journey-to-net-zero-with-new-wildlife-trust-partnerships-ebcd4-40f32.html