英国政府は2026年6月2日、第7次カーボンバジェット(2038-2042年)の提案水準を1990年比約87%削減と設定したと発表した。排出上限を5億3,500万トンCO2換算(535 MtCO2e)とする。エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)が公表し、CCC(気候変動委員会)と環境監査委員会がこの水準を支持した。2050年ネットゼロに向けた中間目標に位置づけられる。
気候変動法フレームワークが示す投資シグナル
今回の水準設定の眼目は、2038-2042年の排出経路を法的に確定させ、投資家と企業に長期の予見可能性を与える点にある。英国は気候変動法2008に基づき5年単位の排出上限を法定化しており、今回の水準を立法化することで2042年までの政策方向を固定する。
2024年7月以降、英国のクリーンエネルギー分野には900億ポンド(約19兆3,000億円)超の民間投資が表明された。ここにはティーサイドのCCSプロジェクトやサイズウェルC原発が含まれる。ネットゼロ経済は2025年に100万人超の雇用と1,050億ポンド(約22兆5,000億円)の粗付加価値(GVA)を生んだ。
除去技術とNbSの位置づけ
CB7の削減経路は電化を主軸とし、削減の大宗を電化が担う想定である。そのうえで技術的除去とNbSを残余排出への対策として組込む。除去は削減の代替ではなく、削減しきれない排出に充てる位置づけとなっている。
ティーサイドのCCSプロジェクトが既に民間投資の対象に含まれることは、投資確実性の枠組みが除去技術側にも及んでいることを示す。泥炭地の再生と植林は、2050年までに約500億ポンド(約10兆7,000億円)の自然関連便益を生むと見込まれる。
一方で、技術的除去の大規模展開にはコストと技術成熟の不確実性が残り、目標達成における除去の寄与度は実装段階の進捗に依存する。
編集部の視点
第7次カーボンバジェットの要点は、削減・電化主導の経路に除去を残余排出対策として明確に組込み、それを2042年までの法定上限として投資確実性に転化した点にある。
気候変動法に基づく5年単位の排出上限は、民間資本を長期プロジェクトへ誘導する制度的基盤として機能してきた。今回の水準法定化は、CCS等のエンジニアド除去を含むクリーンエネルギー投資に対し、2042年までの需要シグナルを与える。
同時に、除去は削減の代替ではなく残余排出への対応として整理され、オフセット依存ではない国内削減型の経路が維持されている。エンジニアド除去とNbSの双方を残余対策に充てる設計は、除去系カーボンクレジット市場の需要構造を左右する論点となる。
参考:https://www.gov.uk/government/news/energy-security-jobs-and-investment-boost-through-climate-action
