東京都 英格付け大手BeZero、Sylveraの2社と連携 「高品質」カーボンクレジットで市場信頼性強化へ

村山 大翔

村山 大翔

「東京都 英格付け大手BeZero、Sylveraの2社と連携 「高品質」カーボンクレジットで市場信頼性強化へ」のアイキャッチ画像

東京都産業労働局は11月27日、カーボンクレジットの品質評価・格付けを行う英国のビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon Ltd.)およびシルベラ(Sylvera Ltd.)の2社と、協力・連携に関する覚書を締結したと発表した。脱炭素社会「ゼロエミッション東京」の実現に向け、今年3月に開設した独自のクレジット市場における取引の信頼性を高め、都内企業による活用を促進する狙いだ。

「品質」への懸念払拭へ、第三者評価を活用

覚書の締結は11月25日に行われた。今回の合意により、東京都と両社は、都内企業等に対するカーボンクレジットの品質確保に関する理解促進や、安心してカーボンクレジットを取引・活用できる環境の構築に向けて協力する。

企業の脱炭素化において、自社努力による排出削減(省エネ等)に加え、外部の削減・吸収量を購入して相殺するカーボンクレジットの活用は不可欠な手段となりつつある。しかし、世界的なボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)では、発行されたカーボンクレジットが実際に主張通りのCO2削減効果を持っているかという「品質」や「十全性(Integrity)」に対する疑義がたびたび持ち上がっており、グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)リスクへの懸念が市場活性化の足かせとなっていた。

東京都はこの課題に対し、独立した第三者機関による客観的な格付け情報を活用することで、市場の透明性と信頼性を担保する方針を打ち出した形だ。

科学的アプローチで評価する英有力2社

今回提携した2社は、いずれも2020年に設立された英国本社のスタートアップであり、急速に成長する炭素市場において「格付け機関(Rating Agencies)」としての地位を確立している。

  • ビーゼロ・カーボン(BeZero Carbon Ltd.)
    「カーボンクレジット市場を通じた気候インパクトの拡大」を掲げ、科学的なデータセットとリスク分析ツールを提供。企業の意思決定を支援する独立した格付けを行っている。
  • シルベラ(Sylvera Ltd.)
    衛星データや機械学習を用いた高度な分析に強みを持ち、カーボンクレジットの炭素排出削減効果が達成される可能性を8段階で格付けしている。

両社はすでに、東京都が2025年3月に開設した「東京都カーボンクレジットマーケット」に対して格付情報の提供を行っているが、今回の覚書締結を契機にその連携をさらに深めることになる。

都内企業の脱炭素化を後押し

署名式において、東京都産業労働局の田中慎一局長は、ビーゼロ・カーボンのトミー・リケッツCEO(Tommy Ricketts)およびシルベラの創業者兼CEOであるアリスター・フューリー博士(Dr. Allister Furey)とそれぞれ合意書を取り交わした。

東京都は、質の高いカーボンクレジット流通を主導することで、都内企業が安心して脱炭素投資を行えるインフラを整備し、「ゼロエミッション東京」の実現を加速させる構えだ。

参考:https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/11/2025112705