東京ガス・伊藤忠丸紅鉄鋼、オフセットガス活用で「低炭素鉄鋼」供給網を構築 エネ・商社連携で製品価値化を支援

村山 大翔

村山 大翔

「東京ガス・伊藤忠丸紅鉄鋼、オフセットガス活用で「低炭素鉄鋼」供給網を構築 エネ・商社連携で製品価値化を支援」のアイキャッチ画像

東京ガスと伊藤忠丸紅鉄鋼は12月9日、カーボンクレジットや非化石証書を活用した「低炭素鉄鋼製品」の開発・販売を包括的に支援する新サービスの提供を開始した。エネルギー供給企業と鉄鋼総合商社が連携し、環境価値の付与から算定、販売までを一貫して支援する枠組みは国内初となる。同日、初号案件として電気炉メーカーのウインファースト(WinFirst)との契約締結を発表した。

本サービスは、鉄鋼製品の製造プロセスにおいて、温室効果ガス(GHG)排出量を実質的に削減するためのソリューションを提供するものだ。具体的には、東京ガスがカーボンオフセット都市ガスや非化石電力といった「環境価値付きエネルギー」を供給し、製造段階での排出量を削減する。さらに、製品ごとのカーボンフットプリント(CFP)算定や第三者検証の取得支援を行うことで、削減効果を客観的な数値として可視化する。

これに対し、伊藤忠丸紅鉄鋼は自社の脱炭素トータルソリューション「MIeCO2」を活用し、鉄鋼流通の顧客基盤を通じて低炭素製品の販路開拓を担う。鉄鋼業界では、サプライチェーン全体での脱炭素化(Scope3対応)への圧力が国際的に高まっており、クレジット活用によるオフセット製品の市場投入を加速させる狙いがある。

今回契約を締結したウインファーストは、三興製鋼および向山工場が出資する企業である。同社は鉄スクラップを原料とする電気炉プロセスにおいて、本サービスを通じて調達した非化石電力やカーボンオフセットガスを使用する。これにより、従来製品と比較してGHG排出量を大幅に削減した鉄鋼製品を製造し、2026年5月頃を目処に販売を開始する予定だ。

東京ガスグループは、今回のスキームを鉄鋼製品以外にも展開する方針を示している。カーボンクレジット市場において、単なるクレジットの売買にとどまらず、最終製品の付加価値向上に直結させる「インセット」的なアプローチの実装事例として注目される。

参考:https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20251209-01.html