東京都は8月8日、二酸化炭素の削減や吸収を目的とするカーボンクレジット創出事業として、3社のスタートアップを採択した。採択されたのは、株式会社TOWING、株式会社ステラーグリーン、株式会社BLUABLEで、農業・林業・水産業の分野で新技術を使った実証を進める。これにより、環境価値の高付加価値化と市場拡大を狙う。
東京都は、CO2を減らすだけでなく、吸収して長期的に固定する「炭素除去(CDR)」の実用化を目指し、2025年度の実証事業として3社を選定した。
農業分野では、愛知県のTOWINGが高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」を農地に投入する取り組みを行う。宙炭は土壌に炭素を長期貯留し、化学肥料の使用量を減らす効果がある。東京都内の農地で導入効果を測定し、カーボンクレジット発行の可能性を検証するほか、青果仲卸業者と連携し、宙炭で育てた作物をブランド化して販売する。狙いは、生産性や収穫量の向上とともに、環境価値による販売価格の上昇で生産者の収入を増やすことだ。
林業分野では、東京都のステラーグリーンが多摩地域の森林を対象に、衛星データとAIを使って森林クレジットの発行コストを下げる。さらに、森林が地下水を蓄える機能を見える化し、森林の多面的な価値を評価することで、クレジットの価値を高める。また、林業従事者の育成や自然体験プログラムの提供など、地域社会への貢献も進める。
水産業分野では、神奈川県のBLUABLEが「ブルーカーボンの深海固定」という新しい方法に挑戦する。海藻を使ってCO₂を吸収し、深海に沈めて長期的に固定する仕組みを実証するもので、東京都の島しょ海域で実施予定だ。生態系への影響も含めた科学的な分析を行い、漁業者や自治体、研究者と連携しながら、カーボンクレジットやESG投資と結びつけた新たなモデルの確立を目指す。
東京都は今回の3事業を通じて、都市と自然の資源を活かしたCDRとカーボンクレジット創出を両立させ、今後の制度づくりや市場成長につなげる計画だ。各事業の成果は2025年度末までに公表される見通しである。