東京海上アセット「森林J-クレジット」創出へ 小田原市森林組合と多面的価値の可視化狙う

村山 大翔

村山 大翔

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東京海上アセットマネジメント(TMAM)と小田原市森林組合(神奈川県)は11月25日、森林由来のカーボンクレジット「J-クレジット」の創出および森林が持つ多面的な環境価値の可視化に向け、協業の検討を開始したと発表した。

機関投資家や企業の間で、単なるカーボンオフセットにとどまらず、生物多様性や地域経済への貢献(コベネフィット)を含む「高品質なカーボンクレジット」への需要が急増していることを受け、金融と林業の知見を融合させ、信頼性の高い炭素除去(CDR)プロジェクトの構築を目指す。

「質」を重視した森林由来J-クレジットの開発

今回の連携において、両者は小田原市内の森林管理を通じたJ-クレジット(森林吸収系)のプロジェクト登録を目指す。特筆すべきは、CO2吸収量という「炭素価値」の創出にとどまらず、森林が持つ「水源涵養」「土砂災害防止」「生物多様性保全」といった、炭素以外の環境価値(ノンカーボン価値)の定量化・可視化に踏み込む点だ。

世界のボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)では、プロジェクトの永続性や追加性に加え、自然資本全体へのプラスの影響が厳しく問われるようになっている。TMAMは、適切な森林経営を通じて生成されたカーボンクレジットに、こうした付加価値を明示することで、サステナビリティを重視する企業ニーズに応える狙いだ。

地域経済循環モデルの構築

本プロジェクトでは、カーボンクレジット創出に伴い発生する間伐材の有効活用も重要な柱となる。小田原市は伝統工芸「小田原漆器」や木工産業で知られるが、両者は地場産業との連携も視野に入れ、地域資源を地域内で循環させる経済モデルの構築を模索する。

TMAMと小田原市森林組合は今後、具体的な対象森林の選定やモニタリング手法の策定を進め、J-クレジット制度への申請準備を加速させる方針だ。2050年のカーボンニュートラルに向け、地方自治体や森林組合と連携し、質の高いカーボンクレジットを供給する動きは、金融機関の新たな役割として定着しつつある。

参考:https://www.tokiomarineam.co.jp/news/2025/b65dik0000000738-att/20251125_sustainability_release_odawara.pdf