TBMがCO2から新素材を生産 ベトナムの火力発電所と連携しクレジット創出

村山 大翔

村山 大翔

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TBMは、ベトナムの発電会社ヴンアン2・サーマル・パワー(Vung Ang II Thermal Power LLC:VAPCO)および建設大手ビエット・ハイ・トレーディング・アンド・トランスポーテーション(Viet Hai Trading and Transportation Co., Ltd.:Viet Hai)と、火力発電所から排出されるCO2を回収・資源化するCCU(炭素回収・利用)プロジェクトの推進に向けた基本合意(MOU)を締結した。

本プロジェクトは、回収したCO2を建築資材やプラスチック代替素材へと転換し、製品内に長期固定化することでカーボンクレジットの創出を目指すものである。ベトナム中部のハティン省を拠点に、地域内でのサーキュラーエコノミー構築と脱炭素化を同時に加速させる狙いがある。

今回の合意に基づき、3社はVAPCOが運営する石炭火力発電所から排出されるCO2と、Viet Haiが供給する鉄鋼スラグを化学合成させ、「CR炭酸カルシウム」を生産するCCUプラントの建設を検討する。計画では、年間約16万トンのCO2を回収し、約40万トンの鉄鋼スラグと組み合わせることで、年間約21万トンの「CR炭酸カルシウム」を生産する目標を掲げた。TBMは、石灰石を主原料とする既存素材「LIMEX」の知見を活かし、CO2を再資源化した新素材「CR LIMEX」の用途開発や、最適なインフラ構築の検討を主導する。

ベトナム政府は2050年までのネットゼロ達成を宣言しているが、2024年1月時点の国内電力構成において石炭火力発電が約55%を占めるなど、依然として高い依存度が課題となっている。急激な経済成長を支える電力の安定供給を維持しながら排出量を削減するため、既存の発電設備を活用したCCU技術への期待は大きい。

本プロジェクトで生産される「CR炭酸カルシウム」は、Viet Haiのネットワークを通じてベトナム国内外の建設資材として供給されるほか、高付加価値な建築内装材やプラスチック代替用途としての普及が進められる。

TBMのカーボンリサイクル事業は、大気中へ排出されるはずだったCO2を素材として固定化し、その削減・固定化量を環境価値としてカーボンクレジット化する独自のビジネスモデルを特徴とする。これにより、排出事業者である火力発電所側は排出削減を実現し、素材を利用する企業はサプライチェーン全体の低炭素化を図ることが可能となる。同社は2024年末に「CR LIMEX」を上市しており、今回のベトナムでの取り組みを「地産地生」型の資源循環モデルとしてグローバルに展開していく方針だ。

今後は、ハティン省ブンアン経済区におけるCCUプラントの詳細な設計および事業性の検証が進められる。3社は、鉄鋼スラグという産業廃棄物の再利用と炭素循環を両立させることで、ベトナムにおけるグリーン転換(GX)の先駆的な事例となることを目指している。

本件は、単なる素材開発の枠を超え、石炭火力発電という「負の資産」をカーボンクレジット創出の「起点」へと変貌させる重要な戦略的一歩といえる。特に注目すべきは、ベトナムというJCM(二国間クレジット制度)のパートナー国において、日本発のディープテックがインフラ企業と深く食い込んだ点だ。

炭素除去(CDR)の文脈では、CO2をコンクリートや建材に封じ込める手法は、自然由来のクレジットに比べて永続性が高く評価される傾向にある。

今後、日本政府のGX投資戦略と連動し、アジア諸国における「排出削減+新素材供給」のパッケージ輸出が、日本のカーボンクレジット市場における新たな供給源として確立される可能性は高い。

参考:https://tb-m.com/news/news-4642/