静岡市は9月1日、森林が持つ二酸化炭素(CO2)吸収や水源涵養といった公益的機能を経済的に評価する「森林カーボンクレジット創出促進事業」を開始した。市は森林を「環境林」と「循環林」に区分し、このうち収益を見込みにくい環境林を対象に、適正な森林管理を進める。創出されるカーボンクレジットは認証を受け、企業に販売されることで森林所有者の収入源となり、持続的な保全につなげる狙いだ。
運営事務局には静銀経営コンサルティングが選ばれ、事業推進を担う。市は実証事業の担い手として、ジャパンガスエナジーと、中井俊裕カーボンニュートラル研究所・エル・ティー・エスの共同企業体を採択した。いずれも令和9年12月まで、森林データ収集や制度設計に取り組む。
ジャパンガスエナジーは「森林の多面的機能を科学的・社会的に可視化し、定量的評価を可能とする枠組みを確立する」と説明した。一方、中井俊裕カーボンニュートラル研究所とエル・ティー・エスは「再生可能エネルギー、森林、公益的価値を組み合わせた『静岡版複合型クレジット創出モデル』を構築する」としている。
市は9月中に事業者との協定を締結し、令和8年7月と令和9年7月に中間報告会、令和10年2月に最終報告会を予定する。新制度で生まれるカーボンクレジットは、環境貢献を示したい企業の需要を取り込み、地域森林の保全と脱炭素経済の循環を支える役割が期待される。