宍粟市の森林J-クレジットが完売 自治体間連携と民間活用で地域課題を解決へ

村山 大翔

村山 大翔

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兵庫県宍粟市は19日、市有林で創出した森林由来のJ-クレジット「令和5年度吸収分」が完売したと発表した。

同市は市域の約9割を森林が占めており、カーボンクレジットの販売収益を次なる森林整備や環境保全活動に再投資する「地域循環型モデル」の構築を本格化させている。

今回の販売分は、同市千種町の市有林308.14ヘクタールを対象とした「宍粟市森林吸収プロジェクトsince2023~しそう・未来へつなぐ森林づくり~」から創出されたものだ。累計発行量902トンCO2のうち、令和6年度(令和5年度吸収分)として提供されたカーボンクレジットがすべて成約に至った。

主な購入者には、西日本電信電話(NTT西日本)グループの地域創生Coデザイン研究所が200トン、大阪府豊中市が125トンなどが名を連ねている。特に豊中市との取引は、SDGs推進に向けた自治体間連携に基づいたものであり、都市部と地方がクレジットを通じて森林保全を相互支援する先進的な事例となった。また、地元の環境スポーツイベント「しそう 氷ノ山 SEA TO SUMMIT」でのカーボンオフセットにも活用されており、カーボンクレジットの利用用途が多層化している。

J-クレジット制度は、経済産業省、環境省、農林水産省が運用する、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「カーボンクレジット」として国が認証する制度である。宍粟市のような森林資源が豊富な自治体にとって、適切な森林経営活動(間伐等)をカーボンクレジット化することは、木材価格の低迷による収益性悪化を補い、持続可能な森林管理を継続するための重要な財源確保手段となっている。

宍粟市は、次回発行を令和8年度(令和6・7年度吸収分)に予定しており、すでに購入予約の受付を開始した。今後、発行規模の拡大や、クレジットに付随する「地域貢献」というストーリー性を高めることで、企業のESG投資需要をさらに取り込む方針だ。

宍粟市の事例は、単なるCO2の相殺(オフセット)に留まらず、都市部自治体との「連携」や「イベントの脱炭素化」といった具体的な物語を付与することで、クレジットの付加価値を高めることに成功している。

J-クレジット価格が上昇傾向にある中、特に「森林由来」のカーボンクレジットは生物多様性保全や地方創生といったSDGs文脈との親和性が高い。今後は、中小企業がサプライチェーン全体での脱炭素を求められる中で、こうしたストーリー性の強い地域密着型クレジットを「企業の顔」として活用する動きがさらに加速するだろう。

参考:https://www.city.shiso.lg.jp/soshiki/sangyo/rinngyousinnkou/tanntoujyouhou/19459.html