日本政府がCCS事業化を加速 2030年代初頭の開始へ「サプライチェーン一貫支援」を検討

村山 大翔

村山 大翔

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経済産業省は2026年1月14日、第34回グリーンイノベーションプロジェクト部会を開催し、二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業を2030年代初頭に開始するための新たな支援方針を提示した

政府は炭素除去(CDR)の鍵となるCCSについて、2024年に成立した「CCS事業法」に基づき、これまでに2件の試掘特定区域を指定済みである。

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今回の会合では、CO2の分離回収から輸送、貯留、さらに回収したCO2の利活用(CCUS)までを垂直統合で支援し、国際競争力のあるサプライチェーンを構築する重要性が強調された。

政府は現在、先進的なCCSプロジェクト9案件に対し、累計564億円の事業設計支援を実施している。

今後は回収・輸送・貯留の各フェーズにおけるコスト課題を精査し、経済的合理性を持つCCUSサプライチェーンの確立に向けた制度的措置を議論する方針だ。また、GI基金の枠組みにおいても、CO2を原料としたプラスチック原料製造(1,540億円)や燃料製造(1,028億円)などのカーボンリサイクル技術への投資を継続し、排出削減と資源循環の両立を狙う。

鉄鋼分野においては、炭素価値を市場価格に転嫁する「需要創出」の取り組みが本格化する。鉄鋼業界は、自らの排出削減活動を「削減実績量」として価値化するガイドラインを策定しており、この概念を国際標準に反映させるべく調整を進めている。政府は2026年度から公共工事において「グリーン鉄」の試行導入を開始し、2030年度には本格的な公共調達へと拡大させる計画だ。

一方、GI基金事業全体では、世界的なインフレや資材費高騰といった「予見性のない環境変化」に対応するため、計10プロジェクトで合計873.9億円の増額が決定された。特にCO2を用いた燃料製造技術開発には532.1億円が追加投入され、投資総額は1,684.9億円に達する。政府はこれらの追加支援を通じ、技術開発から社会実装までのリードタイムを短縮し、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた投資の予見性を高める。

今回の部会では、国際エネルギー機関(IEA)の分析を引き合いに、クリーンエネルギー投資が2025年度に過去最高の2.2兆ドル(約330兆円)に達する見通しも示された。

日本政府は、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組みを活用し、日本企業の脱炭素技術を海外展開する「政策協調」と「個別プロジェクト組成」を加速させる。これにより、国内の排出削減のみならず、アジア全体のトランジション・ファイナンスを通じた市場確保を目指す。

今回の部会資料で注目すべきは、日本政府がCCSを単なる「技術開発」から、事業法に基づく「実務フェーズ」へと明確にシフトさせた点だ。

特に、鉄鋼業界が推進する「削減実績量」の概念は、将来的に国内の自主的カーボンクレジット市場における強力な先行指標となる可能性が高い。これは、削減が困難な素材産業(ハード・トゥ・アベート)にとって、カーボンクレジットの購入ではなく、自社製品の付加価値として炭素価値を直接取引する「インセット」的な市場形成を後押しするものだ。

中小の部材メーカーにとっても、公共調達を通じたグリーン建材の義務化の流れは、サプライチェーン全体で環境価値のトレーサビリティを確保する絶好のチャンスとなるだろう。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/energy_structure/034.html