丸紅、サウジVCMと環境コンサルCBIが提携、サウジVCMがアジア連携でボランタリーカーボンクレジット市場を世界展開

村山 大翔

村山 大翔

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サウジアラビアのリージョナル・ボランタリー・カーボン・マーケット・カンパニー(VCM)は、2025年12月4日、日本の丸紅・サウジ・インベストメント・カンパニーとの間でカーボンクレジット市場協力に関する覚書(MoU)を締結し、さらにアドバイザリーパートナーとしてクライメート・ブリッジ・インターナショナル(CBI)を迎え入れた。この二つの戦略的提携は、サウジアラビアを信頼性の高いカーボンクレジット市場のグローバルハブとして位置づけることを目的とし、サウジVCMのアジア展開と国際的な連携を大幅に強化する。

特に、丸紅が持つグローバルなカーボンクレジット取引と再生可能エネルギーの経験、そしてCBIの持つカーボンプロジェクト開発の専門知識を融合させることで、サウジアラビアおよびグローバルサウスにおける高品質なカーボンクレジット供給の加速を目指す。

丸紅・サウジとのMoUで「ビジョン2030」に貢献

VCMと丸紅・サウジ・インベストメント・カンパニーとのMoU締結は、11月30日から12月1日に東京で開催された未来投資戦略(FII)で正式に行われた。

丸紅・サウジ・インベストメント・カンパニーの玉木直季会長は、このパートナーシップがサウジアラビアの「ビジョン2030」と緊密に連携していると強調。「丸紅が持つカーボンクレジット取引及び再生可能エネルギー分野におけるグローバルな経験」と「VCMが有する高信頼性ボランタリーカーボンクレジット市場の構築といった専門性」を結集することで、低炭素経済への移行と、中東地域全体の持続可能な経済成長を支援すると述べた。

CBIとの提携、プロジェクト開発と第6条の視点

アドバイザリーパートナーとして参加するクライメート・ブリッジ・インターナショナル(CBI)は、サウジアラビアやグローバルサウスにおけるカーボンプロジェクト開発の加速をVCMと共同で推進する。

同社は、プロジェクト開発、政策への理解、マルチステークホルダーとの協働を通じて、組織の気候変動対策戦略を支援する。特に、CBIはシンガポールの経済開発庁(EDB)の助成を受け、東南アジア、アフリカ、中東全域でパリ協定第6条に準拠した初期段階のプロジェクト・パイプライン強化に取り組んでおり、このノウハウがVCM市場の国際的な整合性を高める上で重要となる。

CBIは、500件を超えるプロジェクトに参加し、1億トン(CO2換算)以上の検証済み削減・除去量を取引した実績を持つ。CBI最高経営責任者(CEO)のアルビン・リム氏は、「技術的に堅牢で投資準備が整い、最高水準のインテグリティ基準に準拠した次世代カーボンプロジェクト構築に貢献できる」とコメントし、ボランタリーカーボンクレジット市場でのクレジット供給量と質の向上にコミットする姿勢を示した。

サウジVCMの市場インフラと展望

サウジVCMは、サウジアラビア公共投資基金(PIF)が80%、サウジ・タダウル・グループ・ホールディング・カンパニー(サウジ・タダウル・グループ)が20%を出資して2022年10月に設立された。

サウジVCMは、2024年11月12日にサウジアラビア初のボランタリーカーボンクレジット取引所プラットフォームを立ち上げており、「取引所機能」に加え、脱炭素化を支援する「アドバイザリーサービス」を含む包括的なエコシステム構築を推進している。

この取引所は、透明性、拡張性、流動性の高い市場要件を満たすよう設計されており、主要な世界的レジストリと統合されたオープンマーケット接続性や、イスラム金融を可能にする専門インフラの余地を提供している。

ボランタリーカーボンクレジット市場は、2020年の約3,100億円から2050年までにおよそ約38.7兆円に成長すると予測されており、サウジVCMはMENA(中東とアフリカ)地域のプロジェクトに対する価格シグナルの提供と、迅速かつ安全な取引を可能にする機関投資家グレードのインフラを提供することで、この成長を促進することを目指している。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000173901.html