物流大手の佐川急便は1月28日、東京都八王子市の「高尾100年の森」において、J-クレジットの創出と水源涵養機能の可視化を目指す実証事業を開始したと発表した。
森林カーボンクレジット創出支援を行うステラーグリーンおよびサントリーグループのウォーター・スケープと連携し、2026年12月31日まで実施する。本事業は東京都の「吸収・除去系カーボンクレジット創出促進事業」に採択されており、衛星データと人工知能(AI)を駆使して森林の多面的な価値を経済価値へ転換する新しい循環モデルの構築を目的としている。
今回の実証において、ステラーグリーンは特許取得済みの衛星データ解析技術とAI補正を組み合わせたモニタリング手法を導入する。
従来の航空レーザー計測に代わるこの手法により、J-クレジットの申請に必要な森林成長量の評価を低コストかつ高頻度で実現できる。日本の森林は小規模で分散しているため、従来の調査コストがクレジット創出の大きな障壁となってきたが、テクノロジーによる測定・報告・検証(MRV)の効率化がこの構造的課題の解決策として期待されている。
さらに本プロジェクトの大きな特徴は、炭素吸収量だけでなく「水源涵養」という森林が持つ水の保持機能を科学的に定量化する点にある。ウォーター・スケープが地下水の測定やシミュレーションを担い、森林管理が水循環に与える影響をデータとして可視化する。現段階では水資源そのものを独立したクレジットとして取引する制度は確立されていないが、カーボンクレジットに「水の価値」という付加価値(プレミアム)を付与することで、クレジットの質的向上と価格競争力の強化を図る狙いだ。
佐川急便は2007年から「高尾100年の森プロジェクト」を通じて約50ヘクタールの森林保全を推進してきたが、自社管理地でのJ-クレジット創出は今回が初めてとなる。3社はそれぞれの専門性を結集し、森を守る活動が経済的に自走する「自然資本の都市モデル」を東京から発信していく構えだ。
2026年末までの実証期間を通じ、水源涵養などの多面的な環境価値を評価対象とする次世代型のクレジットモデルの有効性を検証する。
今回の佐川急便らによる取り組みは、日本国内のJ-クレジット市場が「量」から「質」へと転換する重要な節目を象徴している。
特筆すべきはサントリー系のウォーター・スケープが参画し、森林管理を「水リスクの低減」という具体的な企業価値に結びつけた点だ。
カーボンに生物多様性や水源保護の物語を乗せるといった「プレミアム・クレジット」の流れは、今後サステナビリティ投資を重視する日本企業の間で急速に普及するだろう。
参考:https://www.sg-hldgs.co.jp/newsrelease/2026/0128_5548.html


