気候変動対策スタートアップの「リリーフ・アース(Releaf Earth)」は2026年2月16日、米IT大手の「セールスフォース(Salesforce)」に対し、同社初となる炭素除去(CDR)クレジットの引き渡しを完了した。スウェーデンの投資プラットフォーム「ミルキーワイヤー(Milkywire)」を介した本取引は、ナイジェリアにおける産業規模のCDR発行として先駆的な事例となる。
今回供給されたCDRクレジットは、ナイジェリア南東部のクロスリバー州イウリーに建設された最新のバイオ炭(炭化させた生物資源)製造施設で生成された190トン(CO2換算)分である。同施設は農業廃棄物を原料として活用しており、新興認証基準のレインボー(Rainbow)プロトコルを通じてカーボンクレジット化された。
リリーフ・アースは2025年、ミルキーワイヤーが主導する「気候変革基金(CTF)」のCDR購入契約先に選出された15社のうちの1社である。当時、280件に及ぶ世界中の応募の中から、同社の技術力と高品質なCDRの供給能力が評価されていた。選出からわずか1年足らずで実際のカーボンクレジット発行に至ったことは、アフリカにおけるCDRプロジェクトの実現可能性の高さを裏付けるものとなった。
バイオ炭カーボンクレジットの市場価格は、現在1トンあたり100ドルから200ドル(約1万5,000円〜3万円)程度で推移しているが、本プロジェクトは単なる二酸化炭素の固定化に留まらない付加価値を持つ。
本プロジェクトは、リリーフ・アースが掲げる「循環型富のエンジン(Circular Wealth Engine)」構想に基づき、環境と現地の経済的ウェルビーイングを両立させている。
- 収穫量の増加
生成されたバイオ炭を農地に散布することで、作物の収穫量は最大23%向上する。 - コスト削減
世界的に価格が高騰している化学肥料の代替品として機能し、農家の負担を軽減する。 - 所得向上
農業廃棄物の収益化と収穫増により、小規模農家の収入を50%以上増加させる見通しだ。
世界のカーボンクレジット市場では、森林保全などの「排出回避型」から、バイオ炭や大気直接回収(DAC)などの「除去(Removal)型」へのシフトが鮮明となっている。日本国内においても、J-クレジット制度でバイオ炭が対象となり、大手企業による購入事例が増えている。
リリーフ・アースは今回の成果について、「アフリカのテック主導のサプライチェーンが、検証可能な気候への影響と莫大な経済価値を両立できることを証明した」と強調した。同社は今後、アフリカ全域で持続可能な農業を推進しながら、グローバルなテック企業の需要に応えるCDR供給体制の拡大を目指す方針だ。
アフリカ発のバイオ炭プロジェクトは、農家支援という「S(社会)」の要素が強く、サステナブル投資の文脈で極めて訴求力が高い。日本企業にとっても、途上国での食料安全保障と高品質なCDR確保を同時に達成する投資モデルとして、非常に参考になる事例と言えるだろう。
