Primetals Technologiesは4月1日、三菱商事、voestalpine、Rio Tintoと共同で、水素を活用した新たな鉄鋼製造技術の実用化に向けた協力協定を締結した。オーストリア・リンツにおいて、業界初となる微粉鉄鉱石を用いた水素還元プロセスと溶融炉を接続した実証プラントを2027年に稼働予定である。
このプロジェクトでは、Primetalsが開発したHYFOR(Hydrogen-based Fine-Ore Reduction)技術と再生可能エネルギーで稼働するSmelterを組み合わせることで、CO2排出を実質ゼロに抑えた銑鉄生産を目指す。HYFORは焼結を必要としない世界初の直接還元技術で、既にドナウィッツの試験設備で実証実験が進んでいる。
voestalpineは自社の「greentec steel」戦略の一環として、2027年までに電炉を導入し、2029年には2019年比でCO2排出量を最大30%削減する計画を示している。本プロジェクトはその中核を担う取り組みのひとつと位置づけられている。
Rio Tintoは、本プロジェクトに対して鉄鉱石の約7割を供給するとともに、鉱石の品質管理や工程設計の知見を提供。また、三菱商事も鉄鋼の脱炭素化を支える新たな低排出原料供給モデルとして本技術の商用化支援に参画している。
この取り組みは、EUの「クリーンスチール・パートナーシップ」およびオーストリア政府の産業転換支援プログラムなどからの資金支援も受けている。水素を活用した新たな還元鉄製造プロセスは、ペレット化を不要とし、従来の高炉製鉄に比べて大幅なCO2削減が可能とされており、今後の鉄鋼業界全体の脱炭素化に向けた転換点となる可能性がある。