東京大学発のスタートアップであるPlanet Saversは12月18日、豪州のオーストラリアン・カーボン・ボールト(Australian Carbon Vault Ltd(ACV))と、南豪州アーカリンガ盆地における大気中CO2直接回収・貯留(DAC+CCS)プロジェクトの推進に向けた覚書(MoU)を締結した。
本提携は、同社が開発する低コストなDAC技術とACVが保有する世界最大級の貯留資産を組み合わせ、段階的な炭素除去量の拡大を目指すものである。日豪両国の産業協力を深化させるとともに、将来的な高品質カーボンクレジットの日本市場への供給を視野に入れている。
今回のプロジェクトの舞台となるアーカリンガ盆地は、約16億トンのCO2貯留ポテンシャルを有しており、世界でも有数の陸上貯留サイトとして知られる。Planet Saversは、ゼオライトを用いた吸着材を活用し、実用化レベルのコストでのCO2回収を目指している。本提携により、日本独自のDAC技術と豪州の広大な地質学的資産が結びつくことで、商業規模での炭素除去(CDR)ソリューションの社会実装が加速する見通しだ。
両社は今後、南豪州政府とも緊密に連携し、現地の雇用創出やインフラ整備を含む地域経済への貢献も進めていく方針である。特に、DACと地質貯留を組み合わせた手法は、除去の永続性と検証可能性が高く、国際的なカーボンクレジット市場において「高品質」と評価される。Planet Saversは、このプロジェクトを通じて創出されるカーボンクレジットを日本企業へ提供する仕組みを構築し、国内企業の脱炭素経営における新たな選択肢として提示することを目指している。
Planet Saversの池上京最高経営責任者(CEO)は「今回の協業は、当社の低コストDAC技術を世界最高水準の永久貯留能力と結びつけるものだ。パイロット規模から商業規模の供給へとつなげる実践的なステップであり、企業に対する確かな脱炭素提案の実現に向けた重要なマイルストーンになる」と述べた。
また、オーストラリアン・カーボン・ボールトのジェレミー・ジェバモニーCEOは「豪州の地質学的優位性を実際の気候変動対策の成果へと変える重要な一歩だ。アーカリンガ盆地の16億トン規模の貯留資源を活用し、南豪州を拠点とする商業的に意義のある炭素除去産業の基盤を築いていく」と指摘した。その上で、同氏は南豪州政府による日本市場への橋渡しが今回の合意に不可欠であったと付け加えた。
今後は、実証フェーズを経て、具体的な回収量やクレジット発行のタイムラインが策定される予定である。日本初のDACスタートアップによる豪州での大規模展開は、アジア太平洋地域における炭素除去サプライチェーン構築の試金石となる。
本ニュースは、日本のカーボンクレジット市場で技術由来の除去・吸収系、CDRクレジットの調達が見込める転換点を示唆している。これまで日本企業はCDRにおいて、海外の自然由来クレジットに頼る傾向があったが、技術起点のDACによる高品質クレジットを自国企業の手で確保する動きは、経済安全保障の観点からも極めて重要となる。
特に、経産省が推進する「CCS事業法」の議論が進む中、先行して豪州という適地で実績を作るPlanet Saversの戦略は、将来的に国内でのCCS実装に向けた貴重な知見となるだろう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000130404.html


