炭素除去(CDR)およびカーボンクレジットの開発を手掛けるクレアトゥラは2026年2月26日、フィリピン共和国パンガシナン州において、1万4,000ヘクタール規模の水田を対象としたメタンガス排出削減プロジェクトを本格稼働させた。同社が独自開発し特許を取得したデジタルMRV(計測・報告・検証)プラットフォーム「LynxAWD」を全面導入し、約1万戸の協力農家とともに、信頼性の高いカーボンクレジット創出に向けた運用体制を構築した。
本プロジェクトの中核を成すのは、水田の水を抜いて乾かす期間を設ける「AWD(間断かんがい)」手法である。従来の常時湛水状態に比べてメタン排出を大幅に抑制できるが、広大な圃場での実施状況の把握が極めて困難という課題があった。これに対し、同社は衛星データとAIを組み合わせた「SWAPモデル」を活用。植物が地表を覆う環境下でも遠隔で湛水・排水状況を検知し、シーズンあたり10万枚を超える現場写真データと突合させることで、大規模かつ高精度なモニタリングを自動化した。
現地農家からは、AWD導入による「4〜9%の収穫量増加」や「灌漑頻度の低下による労力削減」といった実利面での評価が相次いでいる。同社は2023年の現地チーム組成から段階的に規模を拡大しており、2025年の雨季までに対象エリアを現在の1万4,000ヘクタールへと成長させた。これは日本国内の一般的な自治体の耕地面積を凌駕する規模であり、デジタル技術による農村支援と環境価値創出の両立を実証した形だ。
農業由来のメタン削減は、世界の温室効果ガス排出量の約10〜12%を占める農業セクターにおいて最重要課題の一つとされている。特に東南アジアの稲作地帯は高い削減ポテンシャルを有しており、同社は今後、「LynxAWD」を外部のプロジェクト開発者へSaaS形式で提供する方針だ。これにより、不透明さが課題となっていた自然由来クレジットの信頼性をデジタル基盤で担保し、グローバル規模での供給拡大を目指す。
今後の展望として、同社は技術ノウハウと現地のパートナーシップを深化させ、地域経済の活性化を伴う持続可能な炭素市場の形成を加速させる構えである。
自然由来クレジットの信頼性が厳しく問われる中、人手に頼らないデジタルMRVの確立は、日本企業が世界のカーボン市場で主導権を握るための必須条件である。
本プロジェクトは単なる環境貢献に留まらず、農家の収益向上という実利を組み込むことで「継続性」を担保しており、途上国でのクレジット開発における標準モデルとなる可能性を秘めている。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000119392.html
