大林組 「CN裏込め注入材」を初実用化 シールドトンネル工事でCO2排出量をゼロ以下に

村山 大翔

村山 大翔

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大林組は9月29日、大阪府門真市の下水管渠築造工事において、CO2貯留型の「カーボンニュートラル裏込め注入材」をシールドトンネル工事で初めて適用したと発表した。建設現場で発生するCO2排出を、材料製造段階を含めて実質ゼロ以下に抑える国内初の試みとなる。

今回の工事では、セグメントと地山の間を充填する裏込め注入材に、炭素固定効果を持つ「バイオ炭」を混合した。バイオ炭は木材やもみ殻などのバイオマスを炭化させたもので、長期間にわたり炭素を固定化できる特性を持つ。この炭素貯留効果が、製造過程で発生するCO2を上回ることで、排出量をマイナスに転換する。

大林組によると、通常の裏込め注入材を使用した場合、セグメント1リング当たりのCO2排出量は83.03キログラムに達するが、CN裏込め注入材では-4.07キログラムと算出された。削減率は約105%に相当し、建設資材としては異例の「カーボンネガティブ」を実現した。

施工では、バイオ炭とベントナイト系材料を事前混合したプレミックス品を導入。これにより、バイオ炭の飛散や品質の不安定化を防ぎ、従来と同じ設備・施工サイクルで作業が可能になった。圧縮強度、流動性、硬化時間、材料分離といった品質試験でも、いずれも管理基準を満たしたという。

建設業界は、資材製造に伴う温室効果ガス排出が多いことから、セメントや裏込め注入材の代替・改良技術が注目されている。今回の成果は、CO2削減を義務付けるカーボンクレジット市場にも直結する可能性がある。大林組は「CN裏込め注入材を積極的に提案し、建設分野のカーボンニュートラルを先導する」としており、今後は全国のインフラ工事での普及が見込まれる。

参考:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news202510_cnuragome.html