「有機肥料で温室効果ガス92%削減」 米ナイトリシティ、シリーズBで50億円の資金調達で欧州進出へ

村山 大翔

村山 大翔

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米カリフォルニア州発の気候テック企業ナイトリシティ(Nitricity)は9月10日、シリーズB資金調達で5,000万ドル(約73億円)を確保したと発表した。調達資金は有機窒素肥料「アッシュティー」の商業規模拡大と欧州市場進出に充てられる。同社は従来型肥料生産が引き起こす二酸化炭素(CO2)排出を大幅に削減できる技術として注目されている。

今回のラウンドは欧州最大級の気候ベンチャー投資会社ワールドファンド(World Fund)が主導し、既存投資家コスラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)、チポトレ(Chipotle)のファンドなどが参加した。ナイトリシティは同資金で米国西部における供給網拡大に加え、欧州での実証試験と新拠点設立を進める。

ナイトリシティの主力製品「アッシュティー」は、アーモンド殻、空気、水、再生可能エネルギーを利用して生産される液体有機窒素肥料だ。従来のハーバー・ボッシュ法によるアンモニア合成は、世界の温室効果ガス排出の約5%を占めるとされる。これに対し、ワールドファンドは「ナイトリシティの方式は平均で92%の排出削減効果がある」と分析している。

同製品は有機農家の灌漑設備で容易に使用でき、病原体や動物由来成分を含まない。試験では収量が最大3割増加する効果が確認され、すでに生産分は全量が契約済みだ。

同社は2026年、カリフォルニア州デリーに初の商業規模工場を稼働させる計画で、生産能力は現行の100倍に拡大する。すでに2028年までの供給枠は地域の有機農家との契約で埋まっている。建設にはエレメンタル・インパクト(Elemental Impact)やトレリス・クライメート(Trellis Climate)が資金を提供し、20人以上の雇用創出が見込まれる。

ナイトリシティのニコラス・ピンコウスキ最高経営責任者(CEO)は「欧州市場は米国以上に大きく、循環型農業の推進が追い風になる」と述べ、拡大への意欲を示した。

有機肥料は化学肥料依存からの脱却に寄与し、土壌生態系の改善や水質汚染抑制に加え、炭素クレジット市場との接続可能性もある。ナイトリシティが示す「循環型・低排出の肥料供給モデル」は、農業部門の脱炭素に向けた実用的なソリューションとして注目される。

欧州では有機農業拡大と排出削減義務が強化されており、ナイトリシティの参入が同市場に新たな競争軸をもたらす見通しだ。

参考:https://www.worldfund.vc/articles/nitricity-raises-50m-to-go-global-with-unique-tech-transforming-almond-waste-into-organic-fertilizer

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/nitricity-raises-50m-to-go-global-with-unique-tech-transforming-almond-waste-into-organic-fertilizer-302551874.html