環境省、JCM第3回採択 東南アジアで日本企業のカーボンクレジット創出を加速へ

村山 大翔

村山 大翔

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環境省は11月21日、2025年度(令和7年度)から2027年度を対象とする「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業」の設備補助における第3回採択案件を発表した。今回選定されたのは、シャープエネルギーソリューションによるタイでのデータセンター向け電力供給事業と、ミネベアミツミによるカンボジアでの売電事業の計2件である。

両事業は太陽光発電と大規模蓄電池を組み合わせることで、化石燃料由来のグリッド電力を代替し、年間合計約4万6,773トンの二酸化炭素(CO2)排出削減を見込む。日本政府はこれらの削減分をJCMクレジットとして発行し、日本の国家削減目標(NDC)達成に活用する方針だ。

データセンターと系統安定化に焦点

今回採択された2件は、いずれも再生可能エネルギーの「変動性」を補うための蓄電池(BESS)を併設している点が特徴であり、近年のJCM案件における技術トレンドを反映している。

シャープエネルギーソリューションが代表事業者を務めるタイ・チョンブリ県(東部経済回廊:EEC内)のプロジェクトでは、地上設置型の55メガワット(MW)の太陽光発電所に対し、40メガワット時(MWh)の蓄電池システムを導入する。生成された電力は特定のデータセンターへ専用供給される。AI需要の急増に伴い、世界的にデータセンターの脱炭素化が喫緊の課題となる中、同事業は年間2万5,350トンのCO2削減を目指す。

一方、ミネベアミツミが進めるカンボジア・プルサット州のプロジェクトでは、30MWの太陽光発電設備に11MWhの蓄電池を設置する。発電した全量を同国の国有電力会社であるカンボジア電力公社(EDC)へ売電し、化石燃料依存度の高い同国の送電網(グリッド)を再エネで代替する。こちらの想定削減量は年間2万1,423トンとなる。

パリ協定6条に基づく市場メカニズムの加速

JCMは、パリ協定第6条2項(市場メカニズム)の実装において、日本が主導する国際的な枠組みである。パートナー国(グローバルサウス諸国等)に対し、日本企業が優れた脱炭素技術やインフラを提供することで、実現したGHG削減量を両国で分け合う仕組みだ。

環境省は、2030年度までに官民連携で累積1億トン程度の国際的な排出削減・吸収量の確保を目標に掲げている。今年度はすでに第1回採択でジョージア(シャープ)、第2回採択でフィリピン(伊藤忠プランテック)の案件を決定しており、今回の第3回決定により、アジア・欧州にまたがるクレジット創出ポートフォリオがさらに拡充された形となる。

今回採択された両事業は、今後JCMの実施に向けた法的手続きや設備の建設を進め、稼働後はGHG削減効果の測定・報告・検証(MRV)を経て、正式にクレジットが発行される予定である。

参考:https://www.env.go.jp/press/press_01757.html