国立大学法人九州大学(福岡市)と米格付け機関Calyx Global(カリフォルニア州)は6月18日、カーボンクレジット市場の透明性と信頼性を高めるため、共同研究を開始した。同連携では、Calyx Globalの評価データを活用し、企業のパフォーマンスやESGとの相関を可視化する分析手法を構築する。
研究を主導するのは、九州大学都市研究センターの馬奈木俊介教授とキーリーアレクサンダー竜太准教授。
Calyx Globalは、1,000件近いプロジェクトに対し、温室効果ガス(GHG)削減の真正性(Integrity)や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献度を格付け。プログラム・方法論・個別プロジェクトの3層を対象に、科学的根拠に基づく評価フレームを適用している。
連携では、この評価手法と都市研究センターの研究実績を組み合わせ、質の高いカーボンクレジットが企業評価にどう影響するかを可視化する。また、二重計上(ダブルカウント)リスクや追加性の検証といった課題解消に向け、科学的なMRV(測定・報告・検証)体制の強化を目指す。
教授陣によれば、「カーボンクレジットの真正性を問うだけでなく、地域社会や自然資本に与えるインパクトも多面的に検証する」としており、ESGの社会的要素との整合性確保も焦点となる。
馬奈木俊介教授は「信頼性と持続可能性を備えたカーボンクレジットの可視化は、未来の気候政策と企業戦略の土台となる」と述べ、「質の高いカーボンクレジットが正当に評価される市場の実現を目指す」と語った。