キグナス石油が森林由来J-クレジットのカーボンオフセット軽油を実証販売 九州の物流網で脱炭素化を加速

村山 大翔

村山 大翔

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キグナス石油(以下、キグナス)は2026年1月21日、三愛オブリLPG輸送に対し、長崎県産の森林由来J-クレジットを活用したカーボンオフセット燃料(軽油)の供給を開始したと発表した。

本実証は2025年12月から2026年3月までの期間、三愛オブリを介して九州地方のエネルギー輸送車両を対象に実施される。供給を受けた軽油の10%分を相殺することで、期間中に約20t-CO2の排出削減を見込んでいる。

キグナスは2025年4月から9月にかけて、東海地方でJ-クレジットを付帯した軽油の供給実証を既に実施している。今回は、クレジットの種類を「森林由来」に特定し、かつ需要家の所在地である長崎県産のクレジットを活用する点が特徴だ。地産地消型のカーボンオフセットモデルを構築することで、排出削減だけでなく、地域経済への資金還元を通じた森林整備の促進を目指す。

オフセットの対象となるのは、三愛オブリLPG輸送が九州地方で液化石油ガス(LPG)の運送に使用するタンクローリーの燃料だ。同社は地域のエネルギー安定供給を担う一方で、配送過程でのCO2排出が課題となっていた。今回の取り組みでは、燃焼に伴う排出量の一部を地元長崎の公社林における森林経営活動から創出されたカーボンクレジットでオフセットする。

カーボンクレジットの創出元である公益社団法人長崎県林業公社の狩野渉参事兼総務課長は、「地域の森林整備が創出するCO2吸収の価値が、持続可能なサプライチェーン実現に貢献することは、林業振興に大きな意義がある」と述べ、企業連携によるカーボンニュートラル社会の推進に期待を寄せた。

キグナスは本実証の結果を踏まえ、今後は工場や運送業者などの大口需要家を対象に、カーボンオフセット燃料の本格的な販売展開を検討する方針だ。

国内の排出量取引制度(GX-ETS)の本格稼働を見据え、J-クレジットの需要が高まる中で、地元の環境価値を付加した燃料供給体制の整備を急ぐ。

「地産地消」クレジットが物流脱炭素の現実解か

今回のキグナス石油の取り組みは、単なる排出相殺以上の戦略的意義がある。

現在、日本のカーボンクレジット市場では「どのクレジットを買うか」という信頼性とストーリー性が重視されるフェーズに移行している。特に物流業界はScope1(自社排出)の削減が困難な「ハード・アベイト」なセクターであり、電気自動車(EV)への完全移行には時間を要する。

ここで「地元産の森林クレジット」を燃料にパッケージ化する手法は、荷主や自治体に対する強力なアピール材料となる。今後はこうした「地域密着型オフセット」が中小企業の脱炭素支援のスタンダードになるだろう。

ただし、森林クレジットは価格が高止まりする傾向にあり、実証後の商用化に向けた「コスト負担の分担モデル」をどう構築するかが、次なる課題となる。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000162914.html