係留中の作業船を「CO2吸収源」へ転換 Jブルークレジット取得目指し神戸で実証開始

村山 大翔

村山 大翔

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神戸市と日本海上起重技術協会近畿支部などは2025年12月19日、港に停泊している工事用船舶を活用し、海藻のワカメを育てる実証実験を神戸港で開始する。稼働の合間で待機状態にある作業船を使い、海中のCO2(二酸化炭素)を吸収するブルーカーボンクレジットを生み出そうという、全国的にも珍しい試みだ。

実験の舞台となるのは、神戸市灘区の摩耶埠頭で、ここには、寄神建設が所有する作業船「第17神昭」が係留されている。今回のプロジェクトでは、この船から海中へワカメの「種糸(たねいと)」を吊り下げ、人工的な海藻の森(藻場)を作り出す。

この取り組みの最大の狙いは、建設業界における「脱炭素の新しい選択肢」を作ることにある。

工事用の船は稼働していない間、港に長く停泊し続ける必要がある。この「空き時間」と「船のスペース」を有効活用してワカメを育てれば、ワカメが成長過程で海中のCO2を吸収してくれる。これを測定し、Jブルークレジット認証機関のJBEに申請することで、Jブルークレジットという形で環境価値として取引可能にする。

この実証には、産官学の幅広い組織が協力している。実施主体には徳島大学や武庫川女子大学などの研究機関に加え、JFEスチール、KDDI、大林組といった大手企業も参画。地元からは神戸市やすまうら水産有限責任事業組合などが加わり、海の環境再生とビジネスの両立を目指してデータを収集する。

実証は12月19日から開始される。同協会は今回の神戸での結果をもとに、全国各地の作業船へこの「船上ワカメ養殖」のモデルを広げていきたい考えだ。

参考:https://www.city.kobe.lg.jp/a66324/126636734433.html